「職場につくと涙がポロポロ…」配属2週間で心が壊れた女性が、体験したこと
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職場のストレスで、メンタル不調におちいる人は今や珍しくありません。ただ、よく聞くと、引き金になったのは仕事でも、それ以前から抱えてきた悩みがあるケースも多いようです。
そこで、メンタル不調で休職・退職した女性のケースを掘り下げて、医師の見解も取材してみました。いまメンタル不調に悩む人にも、きっと解決策があるはずです。
「今はとてもいい環境で働けています。この会社なら長く続けていけるかな」
そう穏やかに語るのは、IT企業でWEB制作の仕事をしているゆかさん(仮名・29歳)。
いい会社に正社員として就職できて本当によかった……そう、心から思わずにはいられないほど、ゆかさんのここに至るまでの来歴はあまりにもハードでした。
小学校6年生のとき、仲良し3人組の2人から突然、無視されて不登校に。以降、人とかかわることに恐怖心を覚えるようになり、中学入学後に「社交不安障害」との診断を受けます。
「人と接するとき、『何か間違ったことを言うんじゃないか』とか考えてしまって、緊張して動悸がしたり、手が震えたり、異常に汗をかいたりするんです。中学校は私立に入学して、最初は通えていたんですけど……。みんなの前で先生に怒鳴られたり、同級生で強い口調で言う人がいたりして、1年生の2学期から行けなくなりました」
中学2年の夏に公立中学に転校し、保健室登校。高校は通信制に通い、高卒認定試験を受けて、東京のIT専門学校に進学することが叶いました。ここでは、皆勤賞とはいかないものの、無事に卒業。
そして、学んだスキルを活かせると、システム開発を請負うIT企業に就職したのですが……この会社が絵に描いたようなブラック体質だったのです。
「3か月の研修を終えて、本社に配属になってからが大変でした。私を含めて新卒3人は、朝1時間早く出勤して掃除。電話番も新人3人で回す決まりで、電話当番の日になると昼休みは実質15分しかありませんでした。3コールで取らないと課長が怒鳴るので、気が抜けなくて。
いろいろとキツかったんですが……自分のミスのせいで先輩が怒られた時がいちばん、しんどかったですね」
ある時、ゆかさんのミスについて、先輩が「お前の指導が悪い」として、課長に叱りつけられたそう。しかも説教は2時間! それを、ゆかさんを含む新人3人が、立ったまま聞かされたのです。
「あと、やることもないのに夜10時まで職場に残されて、帰る前、社長に挨拶に行く決まりがあって。そのタイミングで毎回お酒に誘われるんです。深夜まで飲みながら、同期の前で『お前には期待している』『この2人とは違って能力があるから』みたいなことをいつも言われるんです。それも本当にキツかった」
同期をおとしめることでほめられても、いたたまれない気持ちになるだけ。社長の言葉を聞いている同期の苦笑いを見るにつけ、申し訳なさがつのります。それが、飲みに行くたび、恒例になっていたというからひどすぎる……。
そんな日々ですから、ゆかさんの心が壊れるのに時間はかかりませんでした。本社に配属されて2週間。仕事中、勝手に涙が流れるようになっていました。
「毎朝、会社に着くくらいからこみ上げてきて、席について仕事をはじめると、ポロポロと涙が落ちてくるんです。帰りは、夜遅くに駅のホームで電車を待っていると、線路に吸い込まれるような感覚になって。これはマズいと思いました」
不眠や食欲不振、気力の減退といった症状にも悩まされていました。クリニックを受診すると、うつ病との診断。医師は「だいぶ、ひどいね」と言い、すぐに診断書を出してくれたといいます。
そして、休職から1か月後となる8月ごろ、ゆかさんのほうから「ちょっと戻れそうにないので」と退職を申し出ました。同じ頃に、同期の1人も辞めてしまったそう。人が定着しない会社だったのです。
「今では笑ってしまうくらいひどい会社だったとわかりますが、就職活動のとき、あまり深く考えてなかったんですよね。2社しか受けていませんし。『私なんかを採用してくれる会社ならどこでも』といった感じだったんですよね」
退社後は、ITの技術を活かしてフリーランスで単発仕事を受けたり、フリーターや派遣で働いて生活を送ります。そして、その間になんと発達障害の一種、ADHD(注意欠陥・多動症)の診断を受けることに。
「ADHDの友達から『あなたもそうなんじゃない?』と言われて、確かに当てはまるぞと思って、試しに診断を受けたら『やっぱり』という感じです」
振り返ってみれば、身に覚えのあることばかりだったそう。
幼い頃、朝礼のときにじっとしていられず、ずっと体を揺らしていたこと。
忘れ物が多かったこと。
どんなに気をつけていても、遅刻をしてしまうこと。
社会人になっての電話当番で、相手の会社名と名前が覚えられなかったこと。
「でも、ADHDの診断を受けて、出してもらったお薬が良かったのか、今はとても安定しているんです。頭がクリアになるというか。忘れ物も減ったし遅刻もしなくなりました」
現在の会社に入社したのは27歳のとき。入社時に社交不安障害のことや過去のうつ病、ADHDのことを伝え、「特別な支援はできないけどできる限り配慮します」と言ってもらえたのだそう。
「先輩には『タスクは言葉ではなく、文字で教えてください』とお願いしていて、その通りに指示を出してくれているので、とても助かっています。電話は得意な人が出ればいいという考え方ですし、照明が明るくてポジティブになれます。最初の会社は薄暗かったんですよね(笑)。なにより、怒鳴る人がいないのがありがたいです」
メモリークリニックお茶の水の理事長で医学博士の朝田隆先生によると、うつ病だと思っても、その背後に別のメンタル障害がある複合的なケースが増えているそうです。まさにその例だった、ゆかさんのケースについて聞きました。
「社交不安障害は、かつて『赤面恐怖症』とも呼ばれていたものです。人前に出て、顔が赤くなったと思われたり、緊張していると思われたりすることに不安や恐怖を感じてしまう。言い換えれば、過度に人に気を遣ってしまうがゆえに、生じる病気です。ゆかさんはADHDでもあるようですが、同期に対する気遣いや遠慮がちな面は、社交不安障害に起因するように感じます。
ただ、彼女の事例でもっとも重要なのは、新しい環境でメンタルが安定した、ということです。彼女には律儀さや謙虚さがあり、順応する力を持っていたわけですが、同時に、自分でも感じているように薬の効果も大きいのでしょう。
ADHDに対して、日本ではコンサータ、ストラテラ、インチュニブ、ビバンセという4つの処方薬が認められています。薬をうまく使うことで、先天的なハンディキャップを軽減させることはできるのです。
もちろん、薬には副作用があり、それを理解したうえで、医師の処方を守ることが大切です。それには自分で病気を自覚することーー『病識』を持つことが大前提。休職中に、診断を受けたことが、状況を好転させるきっかけとなったと言えるかもしれません」
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<取材・文/女子SPA!編集部 提供/イーガイア>
「人とかかわるのが怖い」。小学6年から不登校に
就職した会社を5ケ月で辞めたわけ

配属2週間で「会社に着くと涙が…」
その後、ADHDの診断が。「やっぱり、と思った」

会社の配慮で、ポジティブに働けるように
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医師に聞く。うつ病の背後に他の障害があることも

朝田隆先生
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【朝田隆 医師】 「メモリークリニック御茶の水」理事長。82年東京医科歯科大学医学部卒業、国立精神神経センター武蔵野病院医長・部長、筑波大学臨床医学系精神医学教授などを経て現職。『認知症グレーゾーン』など著書多数 【WELLXiL(ウェルシル)】