――三木孝浩監督とは、『青空エール』(2016年)以来、6年ぶりの現場です。透と早苗の関係性をみて三木監督からはどんなアドバイスがありましたか?
松本:久しぶりにお会いして、優しく声を掛けてくださいました。道枝さんに対しても寄り添うような演出をされていて、素敵だなと思いました。そのままの状態の道枝さんでももちろん素晴らしいですが、もっといいところを引き出し、映そうとされているのを感じました。だからこそ、私のお芝居で演出に時間をかけさせてはいけないと思いました(笑)。
――その意味でリードする立場で、挑戦的な役柄であったと思います。早苗役を演じ終えて何か変化はありますか?
松本:ほんとうにありがたいことに主演として支えてもらう立場が多かった分、周りで支えることの大変さを学びました。周りの俳優さんたちはこんなに大変なことをされていたんだと痛感しました。
主演として全体の真ん中に立つことよりも、その真ん中に導く大変さやプレッシャーがあると思いました。
――雑誌『週刊SPA!』にて映画コラム「松本穂香の銀幕ロンリーガール」を不定期連載されています。演技と文章、表現としてどんな違いを感じますか? あるいは感覚的には同じですか?
松本:言葉を扱うのは、やっぱり大変だなと思います。読者の方に勘違いをさせたくないので、決めつけ表現を使わないようにしています。「~だと思う」なら分かりますが、「これは~だ」だと評価しているようで、物凄く違和感を感じます。結局のところ好みの問題なので、良い悪いの価値判断ではなく、「ここが刺さった」、「ここが好きだった」を素直に伝えられたらと思います。
【松本穂香さんの連載】⇒
松本穂香の銀幕ロンリーガール
――非常に身につまされる話です(笑)。
松本:あくまで私が個人的に思っていることです(笑)。
――映画のコラムだとやはり女優目線で書き進めていくものですか?
松本:書いているときにどうしても女優目線になる自分がいます。しかし理想としては、素直に映画を楽しんで、それについて書けたらいいなと思うのですが。
――映画『メタモルフォーゼの縁側』についてのコラムでは、「過去の自分と今の自分。私の周りにいる大事な人と、その人たちの大事な人。すべては繋がっているのだと思う」という一節が印象的でした。過去と現在のテーマ性は、『今夜、世界からこの恋が消えても』に共通するものです。松本さんにとって過去の記憶はどのようなものですか?
松本:支えになってくれるときもあれば、プレッシャーになるときもある。そのときの自分の調子によって変わることもあります。そして過去の成功例は自信にも繋がりますが、『メタモルフォーゼの縁側』の主人公二人のお芝居はこの瞬間にしかできないものです。映画はその瞬間を切り取っています。その瞬間瞬間を生きているからこそ美しい。今この瞬間を大切にしなければいけないのは何に対しても同じことだと思います。
【松本穂香さんの『メタモルフォーゼの縁側』のコラム】⇒
松本穂香が絶賛「絶対好きなやつ!と思って大当たり!」/映画『メタモルフォーゼの縁側』