一方、パートナーの転勤に付いて行く形で海外移住した女性も多いですが、彼女たちも無条件で夫に同行することを決めたわけではありません。駐在員の夫と14年から3年間、北京に住んでいた山崎聖美さん(仮名・38歳)もそのひとりです。
「当時、私は都内で働いていましたし、子供もいませんでした。そのため、主人からは『日本に残ってもいいんだよ』と言われましたが、自分の意思で一緒に行くことを選びました。ぜんそく持ちだったので大気汚染がひどい北京での生活は大変でしたけど、その選択は間違っていなかったと今も思っています」
移住後は夫も早く帰宅するようになり、夫婦で過ごす時間が増えたとか。
「元の職場は残業が多く、平日はほぼ寝に帰っているような状態でした。それが専業主婦としてずっと家にいるようになったことで『家に帰るのが楽しみなった』って。私は日中ヒマすぎて最初はどう過ごせばいいか困りましたが、おかげで赴任中に子供を授かることもできたので。
今でも彼とたまに話すんですけど、あのとき日本に残って別居生活になっていたらスレ違いで最悪離婚もあったと思うんです。そう考えたら夫婦にとっても大きなターニングポイントになったのかなって」
ただし、個人としてもこの決断は人生においてプラスになったようです。
「私は昔から縁というのを大事にしていて、普通なら悩むべきところなのにまったく迷いませんでした。駐在員の妻同士の面倒な付き合いがあるのは承知のうえでしたが、それ以上にワクワクした気分になったんです。日本からそれほど遠くないし、在留邦人が多い土地という安心感もあったのかもしれませんが、自然と移住を前向きに捉えた自分の気持ちを大事にしようと思いました」