Vol.22-2 有名デザイナーと不倫した妻のまさかの言い訳「生活の垢にまみれてる」
【ぼくたちの離婚 Vol.22 色褪せる花束 後編】
書籍化・コミック化も果たした人気ルポ連載「ぼくたちの離婚」。これまであまり語られてこなかった「男性側の視点から見た離婚」をライターの稲田豊史さんが取材しました。付き合っていた頃から「理想的な文化系カップル」だった、フリーライタのー山野辺武志さん(仮名/36歳)とその妻・美代さん(仮名)の離婚理由に迫るルポの後編(前編「サブカル夫が妻と離婚した悲しすぎる理由。“理想的な文化系夫婦”だったのに」)です。
【前編】⇒「サブカル夫が妻と離婚した悲しすぎる理由。“理想的な文化系夫婦”だったのに」はコチラ
※以下、稲田さんによる寄稿。
LINEの「誤爆」で妻の不倫に気づいた山野辺さんは、「明日、職場の同僚数人と夜桜を見たあとカラオケボックスでパーティーをするから、帰りが遅くなる」という妻の急な予定の報告に疑念を抱き、翌日の夕方、妻の会社の前で張り込んだ。すると、妻と一緒に大柄で髪をゆわえた男性が会社から出てきたのだった。
美代さんとその男性は地下鉄の駅へ。数駅乗って降りたのは「新宿三丁目」駅。
「地上に出た美代とその男はゴールデン街を抜けて、歌舞伎町のラブホテル街に消えていきました」
その日の美代さんはタクシー帰り。山野辺さんが「カラオケどうだった?」と聞いても、「うん、楽しかった」程度の返答で、具体的な話は何も出てこなかった。
ただ、山野辺さんはその場で美代さんを詰めなかった。
「美代を問い詰める前に、証拠を固めようと思ったんです」
山野辺さんは美代さんのスマホに目をつけた。
「彼女のスマホは指の動きで画面ロックを解除するタイプ。実は数週間前に彼女の指の動きを間近で見て、覚えていたんです」
数日後、美代さんが風呂に入っている間に、山野辺さんは美代さんのスマホの画面ロックを解除。すると、カラオケ翌日のLINEのやり取りの中に、「旦那、気づいたんじゃないの?」というメッセージを発見する。しかも、それを送ってきた人物は山野辺さんも知っている印刷会社の社員だった。
「アウトだなと思い、ストレートに『あの日、ホテル行ったよね?』と問い詰めたら、あっさり認めました」
実は当時、山野辺さんと美代さんは、美代さんの母親名義の土地に一戸建てを建てたばかりだった。
「建物のローンも34年残ってました(笑)。なのに、なんで浮気なんて? と聞いたら、『家を建てれば変わると思った』『いつかはちゃんとしなきゃと思ってた』。まったく意味がわかりません」
離婚手続きはつつがなく進んだ。
「あとで分かったんですが、美代の不倫相手は印刷会社に出入りしているデザイナーでした。サイトに出ていたプロフィールによれば、仕事実績はかなり輝かしくて、何かの広告賞も獲っている。事務所もすごくおしゃれでした」
山野辺さんは自嘲気味に言った。
「写真にしろ、美術にしろ、デザインにしろ、僕なんかよりずっと手応えのある対話相手だったと思います」
財産分与について話し合う席で、美代さんは山野辺さんに言った。
「正直、君は生活の垢にまみれてたよね。私は帰りにスーパーで何を買うかより、今さっき見た美術展の話をもっとしたかったんだ」
「証拠固め」のためスマホを盗み見
「君は生活の垢にまみれてたよね」
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