Vol.22-2 有名デザイナーと不倫した妻のまさかの言い訳「生活の垢にまみれてる」
「その仕事って、未来に残るの?」
山野辺さんは唖然とした。
「驚き、腹が立ち、悲しくなりました」
美代さんは交際中から一貫して、写真や美術や演劇や純文学の話には乗ってくるものの、お笑いやアニメやサブカル評論の話にはまったく乗ってこなかった。山野辺さんもそれはわかっていたが……。
「僕のフィールドに興味がないことは別にいいんです。じゃなくて、僕はそこではっきり理解したんですよ。この人は“サブカル”に興味がないだけでなく、はっきり“下”に見ているんだなって」
ですから、と山野辺さんはため息まじりに続けた。
「離婚を回避できたかというご質問の答えは、結婚2年目にもう壊れていた、です」
どこに出しても恥ずかしくない存在
美代さんが変名でやっているというインスタを見せてもらった。スイーツや猫やウェイ的な写真は一切ない。インテリジェンスあふれる建築物、構図のしっかりとれた風景、端正にデザインされた雑貨や食器などのサムネイルが、統一感のある色合いで整然と並んでいる。「隙がないというか、どこに出しても恥ずかしくないって感じですね」と感想を述べると、それを受けて山野辺さんは言った。
「僕は最後まで、美代にとって、どこに出しても恥ずかしくないパートナーにはなれなかったんだと思います。このインスタ、まるで写真展の図録みたいじゃないですか? サブカルクソ野郎の入り込む余地なんて、1mmもないんですよ」
【ぼくたちの離婚 Vol.22 色褪せる花束 後編】
<文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。映画配給会社、出版社を経て2013年よりフリーランス。著書に『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)、『オトメゴコロスタディーズ』(サイゾー)『ぼくたちの離婚』(角川新書)、コミック『ぼくたちの離婚1~2』(漫画:雨群、集英社)(漫画:雨群、集英社)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)がある。【WEB】inadatoyoshi.com 【Twitter】@Yutaka_Kasuga
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