Lifestyle

米津玄師がつんくの歌詞から引用で「そうだ!We’re ALIVE」を選んだ理由とは

米津が「そうだ!We’re ALIVE」歌詞から選んだ理由

 とはいえ、数あるつんく♂作品の中で、なぜ米津は「そうだ!We’re ALIVE」を思いついたのでしょうか。たとえば<日本の未来は 世界がうらやむ>(「LOVEマシーン」)みたいに、もっとみんな知っている曲があるじゃないかと思うかもしれません。  しかし、そこにソングライター米津の鋭さを感じるのです。おそらく彼は意味以上のものを求めていたのではないでしょうか。
モーニング娘。「そうだ!We're ALIVE」ZETIMA

モーニング娘。「そうだ!We’re ALIVE」ZETIMA

 つまり、“努力”、“未来”といったひとつひとつは手垢(てあか)のついた言葉のあとに、“A BEAUTIFUL STAR”がもたらす飛躍。語句の持つサウンドと字面のビジュアル的な強さ。これを「KICK BACK」に取り入れたかったのではないかと想像するのです。  なぜなら、今回のような彼らの関係性はまぎれもなくソングライティングの歴史の一部だと言えるからです。

奥田民生提供のPUFFYの曲と、山下達郎の名曲との意外な関係

“日の下に新しきものなし”(旧約聖書)との格言を持ち出すまでもなく、ソングライティングは無数の模倣(もほう)と借用を経て、質を高めてきました。米津玄師とつんく♂のエピソードを聞いて思い出したのが、ジミー・ウェッブ(注1)とハリー・ニルソン(注2)の関係です。  ニルソンが「Gotta Get Up」という曲を作る際、ウェッブの「Up Up and Away」のフレーズを使ってもいいかたずねたというのです。まさに米津とつんく♂の間にあるミュージシャンシップと同じですよね。そしてニルソンも米津と同様に、借用したフレーズに新たな息吹を吹き込んだわけです。  歌詞ではありませんが、「渚にまつわるエトセトラ」(PUFFY 作詞・井上陽水 作曲・奥田民生)と「さよなら夏の日」(作詞・作曲 山下達郎)の間にも無言のリスペクトがあることに気づきます。 「さよなら夏の日」のイントロが、<リズムがはじけて恋するモード>というファンシーな言葉によって生まれ変わっている。使うのに気が引けるほどの大ネタも、彼の手にかかるとあっけらかんとしたものです。  また、奥田民生は<立派な人達は立派な人達だ>(「人の息子」)という歌詞を、大胆にも川端康成の『伊豆の踊り子』から引用しています。  いずれも大胆不敵な姿勢で先人へのリスペクトを示している点で、特筆すべき存在です。
次のページ 
宇多田ヒカルやTHE BOOMも古典の引用に独自の姿勢
1
2
3
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ