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米津玄師がつんくの歌詞から引用で「そうだ!We’re ALIVE」を選んだ理由とは

宇多田ヒカルやTHE BOOMも古典の引用に独自の姿勢

 古典をもとに独自の問題意識を作り上げるアーティストもいます。  エドガー・アラン・ポー(注3)の詩「The Raven」をモチーフに、自身の内面を徹底的に探っていった宇多田ヒカルの「Kremlin Dusk」(Utada名義)や、日本国国歌「君が代」を引用する形で沖縄の問題をポップソングの形で世間に突きつけたTHE BOOMの「島唄」。  これらは音楽的なテクニックとしての借用を超えて、ポップソングにできることを追求する姿勢が際立つ例です。  他にもこうした例は数え切れないほど存在しています。至るところで無数のやり取りから生まれる信頼と敬意が、綿々と続くソングライティングという営みを支えているのです。

米津のアイデアを受け止めた、つんく♂のデカさ

 その意味で「KICK BACK」で示した米津玄師の真摯な姿勢には大きな意義がある。彼の熱意によって、主題歌決定がただのエンタメニュース扱いで終わらずに済んだからです。  そして、若者のアイデアを思う存分に受け止めたつんく♂のデカさもあっぱれ!  noteの文面からも、年齢差など関係なく対等な相手としてリスペクトをする姿勢がひしひしと伝わってきました。読んでいてとても清々しい気分になりました。  これは何百万枚の売上、何億もの再生回数を記録するよりも大きな価値を持つことでしょう。 (注1)アメリカのシンガーソングライター。76歳。作詞、作曲、オーケストレーションの3部門でグラミー賞受賞。カントリー歌手のグレン・キャンベル、ポップス歌手のリンダ・ロンシュタットなどに楽曲を提供。代表曲に「By The Time I Get to Phoenix」、「Wichita Lineman」、「MacArthur Park」など。 (注2)アメリカのシンガーソングライター。1941-1994 映画『真夜中のカーボーイ』の主題歌「Everybody’s Talkin’」(オリジナルはフレッド・ニール)の世界的大ヒットで知られる。マライア・キャリーもカバーした「Without You」(オリジナルはバッドフィンガー)でも有名。自身の代表曲に「I Guess the Lord Must Be in New York City」、「One」など。 (注3)アメリカの詩人、小説家。1809-1849 ゴシック小説の『アッシャー家の崩壊』や推理小説『モルグ街の殺人』などで知られる。 <文/石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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