三浦義村もなかなかいいキャラで、主人公・義時(小栗旬)の味方か敵かわからない謎めいた人物である。義時に鋭い意見を言い、信頼されているものの、自分に得になるほうにひらりひらりと身を交わしていく。実際、こういう人がいたらいやだけれど、フィクションのなかではその身軽さが爽快。
山本のさじ加減で、毒舌も身の翻し方もベタつかないのがいい。メフィラスにも共通した魅力である。そうかといって山本耕史が常にクールでドライな演技専門かというとそんなことはない。土方のようにとことん情のある熱いくらいな人物もまたハマるのである。
![「新選組!! 土方歳三最期の一日]ジェネオン エンタテインメント 山本耕史](https://joshi-spa.jp/wp-content/uploads/2022/10/51DRl-o7n0L._AC_.jpg)
「新選組!! 土方歳三最期の一日]ジェネオン エンタテインメント
土方にしろ、三浦義村にしろ、メフィラスにしろ、斜めに構えたキャラが山本の当たり役になっているが、演技は決して斜に構えない。ど真ん中。斜に構えた人物をど真ん中の安定感で演じる。いまどき珍しいくらいに清々しい俳優である。どんな役割でもど真ん中に球を投げ込む。
彼が古澤巌とコラボしたミニアルバム「Dandyism Banquet」で歌っている英語の曲を聞くと、音程がしっかりしていて、英語の発音もきれい。耳がいいのか、音を外さない。その安定感が、みんなの期待を外さない感覚にも発揮されているように感じる。もちろん、どの役も企画ありきで、その企画者や脚本家などが慧眼の持ち主なのだが、山本耕史が企画の意図を完璧に汲んで完璧にやってみせるからこそ成立するのである。
先日、当人にインタビューしたときは作品の本質は外さず「ギリギリのところを攻めることに賭けています」と語っていた(クロワッサン2022年10月10日号より)。心技体、完璧に整えながら、品行方正優等生ではなく、的のど真ん中のキワキワのほうが確かにドキドキする。最も難しいところに挑むそのメンタルのタフさが山本耕史の魅力ではないだろうか。
金曜ドラマ「クロサギ」(TBS)にも出演している山本。番宣番組の「オールスター感謝祭」(10月1日放送)に出て、トランプでタワーを作るゲームに参加した山本に、そのタフさを筆者は感じた。
トランプの1段目は軽く作れたが2段目は何度やっても崩れてしまう。クールに振る舞っているが、タイムリミットが近づき、じょじょに焦りが滲(にじ)んで見える。何度やっても崩れてしまう様子を大勢に注目され、カメラも回っている。きーーっとヒステリックになったり、もうダメだとやけになったりしそうなものを、山本は最後まで諦めず、表情を崩すことなく集中し続けた。その指先の緊張感はどんな演技よりもすごいものを見た気がする。これはもう並大抵のことではない。