「お年寄り優先」だけど「弱者に優しい」わけではない
──おかしな話ですよね。双子ベビーカーOKのバス会社が存在するということは、技術的にダメだという理由がなくなるわけで。
秋澤:ええ、ですからそこは会社としての考え方の話になってくるんです。簡単に言うと都営バスという組織はお年寄りが仕切っているものですから、経営方針も「お年寄り優先」というのが第一に来るんですね。「すべての老人が席に座れる状態にする」というのが至上命題。もっとも「お年寄りに優しく」という基本方針にしたって、厳密に言うなら「自力で歩ける老人には優しく」ということなんですけどね。
「弱者に優しく」という角度では決して考えていないわけですよ。自分たちの身の周りにいる人間に手厚くするというか、マジョリティを相手にした経営方針になっているので。
──なぜそこまで偏屈なんでしょうね。
秋澤:いや、本当に……(苦笑)。あまりにも相手が無理解なものだから、私も途中でめちゃくちゃ泣いたことがあるんです。そうしたら、こんな例え話をされたんですよね。「もしかしたらヨロヨロした80歳のおばあさんが席に座れないケースもあるかもしれない。そのおばあさんは手に持っていた荷物を双子ベビーカーに落とすかもしれない。奥さん、あなたの大事なお子さんをそんな危険な目に遭わせてもいいんですか?」って。仮定の話だったとしても、前提からしてデタラメすぎると思いました。
こうして秋澤さんの「双子ベビーカー使用者の権利を勝ち取る闘争」は幕を開けることになる。
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「双子ベビーカーもバスに乗せて」小池都知事に伝えた双子ママ。炎上の先に得たものは