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岡田将生のナース役に引き込まれる!『ザ・トラベルナース』にみる米アカデミー帰りの実力

 新米医師のほんわかした雰囲気を基調とする『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)が10月期ドラマクールで最注目の医療ものだが、プロフェッショナリズム全開の『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系で毎週木曜日よる9時放送)は、中園ミホの脚本が華麗な印象を与える。
『ザ・トラベルナース』公式サイトより

『ザ・トラベルナース』公式サイトより

 主人公・那須田歩(岡田将生)は、各地の病院を渡り歩く看護師である「トラベルナース」。カリスマ的な才覚の持ち主ながら、同僚となった看護師・九鬼静(中井貴一)とのコミカルなやり取りを繰り広げる。本作の岡田将生は、もうほんとうにかっこよく、中井貴一はもうほんとうに面白い。 「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、トラベルナースを演じながらまるで旅をしているような岡田将生の不思議な魅力に迫る。

岡田将生の説得力ある演技

 アメリカ、シカゴの病院で働く那須田歩(岡田将生)は、医師ではなのだけれど、どうも凄腕らしい。緊急の患者が運び込まれると、すぐさま患者が置かれた状況を把握し、的確な応急処置を施す。処置中の彼の視線の動きや首筋の微動ひとつとっても、無駄がなく寸分の狂いもない。プロフェッショナルにふさわしい完璧な動き、完璧な仕草で、視聴者を圧倒しながら、早くも物語世界へぐいぐい引き込む。  手術を成功させた歩が手元のデジタルウォッチを確認すると、帰国の要請が表示される。彼の俊敏で迅速な行動によって、舞台は早くも海を越えて日本へ移る。ここまでの展開を無理なく演じる岡田将生の手際のよさは、もはやほとんど芸術的な域に達している。一連の動きをひとつの流れるようなリズムの中に律動させる彼の演技は、自然で、妙に説得力がある。

アメリカからの凱旋序曲として

 記憶に新しい2022年の米アカデミー賞(第94回)の授賞式を思い出してほしい。濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(2021年)に出演した俳優のひとりとして、岡田は映画界の世界的な祭典に出席した。授賞式に現れた岡田の美しさがすぐに話題になり、SNSでアメリカ中に拡散され、賞賛された。彼の美しさが、海を越えて世界共通のものになった瞬間だった。  岡田は、同作で威風たっぷりに主演を張った西島秀俊よりも注目を集めた。授賞式の会場で大きな爪痕を残し、話題をさらったことを仮に差し引いたとしても、本編中あれだけの怪演を見せた岡田が助演男優賞にノミネートすらされなかったことが、もうほんとうに不本意というか、不思議で仕方なかった。  それでもう一度、ドラマの冒頭に戻ってみる。シカゴの病院で確かな成果を積んだ歩が日本に帰国する。それが現実の岡田がハリウッドから凱旋したこととピタリと符号する。本作は、岡田が帰国後初のドラマ放送だ。アカデミー賞出席以前以後では、そりゃ印象はがらっと変わる。そんな凱旋序曲として冒頭場面は演出されているというわけだ。
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絶妙な配分とあんばい
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