佐野:斎藤のような男性って、今までのドラマにはたぶんあまり出てこなかったと思うんですが、何がポイントかというと、「穏やかな口調なのに傲慢さがにじみ出ていて、でもとにかく魅力的であることが問題で。そこが悔しい」という話をしたら、本当にそんな男が出てきました(笑)。
――恵那も、見下されているとわかりながらも、身をゆだねてしまいますからね。
佐野:斎藤とのやりとりには本当にムカついて。「なんで知っているんですか? この話しましたっけ」とあやさんに言ったんですけど、話してなくても多分あやさんには見透かされているんですよ。人間というものがわかっているんだなといつも思います。
その一方で、男性のスタッフや役者さんからは「斎藤はファンタジー」と言われたんですよ。
――えーっ!? すごくリアルですよ。
佐野:そもそもホモソの頂点にいるような男性は、うまく振る舞うから、恵那に見せるような側面を男性には見せないわけで。男性にはわからないんだろうなと思いました。

最終回はどうなるのか⁉(C)カンテレ
――女性にとっては、「こういう男、いるいる」ですよね。
佐野:本当に。でも、演出の大根(仁)さんだけはたぶんわかっていて、大根さんの演出でちょこちょこ増えている斎藤の描写もあるんです。例えば、恵那の部屋に上がりこんで寝ているときに、靴下を脱いでるとか。台本で指定していないけれど、買ってくるビールの感じとか。
――恵那には「もっといい酒飲めよ」と言いながら、買ってくるのはシャンパンやワインじゃなくて、せいぜいちょっといい缶ビール。しかも何本も買ってくる。ストックしといて気が向いたらまた来るつもりなんだなというのが見えて、イラッとしました(笑)。
佐野:そうなんですけど、あやさん自身は「図々しい」とか「嫌なヤツ」だとは思っていないんですよ、多分。すべての人をフラットに見ているところが、あやさんの素晴らしいところで。「誰が見ても嫌なヤツ」って、平面的になっていくじゃないですか。私は嫌なヤツだと思っているんですが、それでいて魅力的なところがまたムカつくんですよね(笑)。
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次週は、いよいよ迫る最終回と、佐野さん自身の人生観について聞きます。
【前編を読む】⇒
『エルピス』長澤まさみと眞栄田郷敦には“モデル”がいた。佐野Pに聞く傑作の舞台裏
<文/田幸和歌子>