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NHK『大奥』福士蒼汰の経を読みあげる“声”にドキリ、恐ろしい響きだった

斉藤由貴の声が、キャラクターの人生を昇華させる

 そして斉藤由貴演じる春日局の深み。いわば<家光×有功編>におけるヒールであろうが、単純にそう言えないキャラクターへと仕上げ、見る者の心にババをしっかりと残した。徳川も家督を女に継がせるべきと、皆が口をそろえ始めるなか、男女逆転大奥をスタートさせた春日が、「笑止千万!」とかたくなに反対する。戦国の世を知っている春日だからこその恐怖、怯えであり、女の価値を「子を産み」お家を繋げることのみと考えている表れでもある。
斉藤由貴の声が、キャラクターの人生を昇華させる

(C)NHK

 そんななか倒れた春日は、彼女の性格を考えて「わたしがしているのは嫌がらせですから」と話す有功の世話を受け入れる。そして春日の最期。思えば、本作は1対1、ふたりきりで見せ切る印象的な場面が幾度も登場してきた。それだけ、自分自身の葛藤とともに、誰かと誰か、最小限の単位で生まれる対ひとのドラマを丁寧に見せてくれる。そしてそれは役者の力量を信じ、任せなければできないことだ。  自分のことを語りだす春日。涙を流しながら「そなたに聞いてもらえれば、よい」と。そして「まだわたくしなどが、お力になれることがございますでしょうか」と言う有功に(本当にこのひとは、自分のことは何もわかっていないのだわ)とでも言いたげな、わずかな、そして優しさを含ませた目の動きを見せて、「あの日わしは、仏を、さらってきたのじゃ」と春日にとっても、有功にとっても、これまでの日々を救いに昇華しうる言葉を、斉藤が見事な機微をこめて口にした。

第5回の濃ゆい組み合わせが楽しみ!

 第5回は三代将軍家光・万里小路有功編から五代将軍綱吉・右衛門佐編へとバトンタッチ。予告編でも、これまでとは全く毛色の違う世界観になっていて、これまたゾクゾクする。ちなみに原作を知らない人に情報まで。仲里依紗演じる、煌びやかな綱吉の横にいる、(出家姿なのに)これまたド派手な父・桂昌院(竜雷太)は、かつての玉栄であり、あの有名な法令のキーパーソンである。そして何より仲里依紗×山本耕史の濃ゆい取り合わせが楽しみで仕方ない。 <文/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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