Love

職場のストレスで夫がうつに。ため息も食欲不振も“夫の悲鳴”だった

夫を治したくて、自分が壊れていく

「こんな人じゃなかった」。病によって夫の言動が変化し、はては暴力までふるうようになった時、妻の彩原ゆずさんは何度もそう思いました。心に浮かぶのは、かつてやさしかった夫の姿。最初は献身的に尽くすゆずさんですが、次第に夫の病状はエスカレート。買物依存、風俗通い。クレジットカードの明細書や風俗店のポイントカードを目にするたび、ゆずさん自身も壊れていきました。  子供がいるからと耐えていても、ふいに涙は流れ、自傷行為にまで及んでしまうのです。このあたりは読んでいて胸が詰まります。ゆずさんは生真面目で愛情深く、責任感の強い女性なのでしょう。夫の病を治したいと切望すればするほど、ふがいない自分にも怒りがわいてくるのかもしれません。  ご自身のメンタルに不安を覚えたゆずさんは、保健所を訪ねます。カウンセラーや義母や母、かつての同級生とふれあううちに、自分の幸せについて考えるようになるのです。

マンションのベランダからダイブしそうに、踏みとどまれたのは…

『夫婦で心を病みました 優しい夫が双極性障害を発症したあの日から』 夫も「死にたい」と思いつめ、やがてゆずさんも「死にたい」とマンションのベランダからダイブしそうになります。あと一歩で踏みとどまれたのは、子供の存在や、それでも一緒にいたい夫の存在があったから。そしてきっと、ゆずさんの魂が「まだ死ねない!幸せになりたい」と叫んだからではないでしょうか。  巻末にあるのは、「自分犠牲にして、一人で抱え込まないでーー!」のメッセージ。自分の幸せもあきらめなかったゆずさんが、やがて見つけた解決策は、あなた自身が確かめてください。きっと勇気が湧いてくるはずです。 <文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx
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