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鈴木亮平の“ゲイ男性像”が生々しく、美しい。映画『エゴイスト』が描く愛の姿

浩輔の昼と夜

映画『エゴイスト』より ©︎2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会 浩輔の審美眼は、筋金入りである。特に男性に対する品定めとなると、センサーがびびっと反応する。実際に新宿二丁目で遊ぶとわかるのだが、あの夜の街で交わされる男たちの視線ほど、つややかで、同時に卑猥なものはない。相手を求める本能がむき出しなのに、それが人間としてすごく自然な美しさに思えるのだ。  浩輔も二丁目の住人として、気のおけない仲間たちと毎晩のように飲み歩く。よくもこんなに下ネタが連発できるなと感心するくらいくだらない会話で笑い合う。しかし彼は孤独でもある。この孤独をどううめたらいいのか。知り合いづてに、浩輔はある男性に出会う。  この男性との出会いは、夜ではなく昼であることがより深い関係性を匂わせる。夜は二丁目の仲間たち。昼は彼との濃厚な時間。浩輔の昼と夜は同じようでいてそうではない。彼にとっての夜が日常なら、昼は特別な愛だろうか。

白昼のメイクラブ

映画『エゴイスト』より ©︎2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会 本作が描くゲイ男性間の性愛描写のリアルは、実際にゲイ男性からの評判がいい。浩輔が出会った龍太(宮沢氷魚)は、パーソナルトレーナーで彼もゲイの男性。すぐにお互いにフィーリングが合ったことを確認したふたりは、素っ裸で身体を重ね合わせるのもまた早い。  浩輔のマンションの一室で行われるメイクラブは、だいたい昼に行われる。この昼の光によって行為がものすごく官能的に映る。窓の景色に感動する龍太に浩輔が「何か飲む?」と聞いた瞬間、鈴木亮平のクロースアップの画面に宮沢氷魚がフレームインして熱いキスをする。  スクリーン越しとはいえ、白昼のメイクラブをまじまじと見せつけられるリアルさはすごい。彼らはタチとウケを瞬時に把握する。鈴木亮平がウケなんだ、姉さんやっぱりだなと思ったり。龍太の帰り際、玄関で交わされる何気ないやり取りが美しい。彼がドアを開けて外に出る瞬間、昼の外気が入ってくるのだが、その寸前まで彼らのメイクラブは続いているわけだ。この玄関先のさりげない演出力に、本作の松永大司監督の手腕を見た。
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毛皮のコートをまとう“衝動的な美しさ”
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