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「辻希美さん“ママゴト婚”批判にも負けなかった理由」ジェーン・スーが受けた衝撃

ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによる、初のインタビューエッセイ『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』(文藝春秋)の目次には、誰もが知る人の名前が並んでいる。田中みな実、柴田理恵、大草直子、野木亜紀子……。すぐに「成功者」という言葉が浮かぶかもしれない。 たしかにそれは間違いではない。けれど、それにつづいて「もともと美貌に恵まれていたから」「才能があったから」「たまたまラッキーだったから」と思ったのだとしたら、読みすすめるうちにその考えはみるみる変わるはずだ。
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撮影:宮田浩史(以下同)

スーさんにとって「敬意を表す」女たち13人のインタビューが収録されている。まずはなぜこの顔ぶれになったのか教えてもらおう。

イノベーターである女性13人

ジェーン・スー:女性の場合、ロールモデルがなかなかいないとよく言われます。それは女性の生き方の正解がひとつでないからであって、私はそれ自体はとてもよいことだと思っています。生き方にいろんなバリエーションがあるなかで、ならば、みずから自分の居場所を作ってきた、そんなイノベーターである女性のお話を聞きたいと、こちらからお願いしました。 ――美容家の齋藤薫さんから漫画家の一条ゆかりさんといった、いわゆる大御所とされる人から、30代の辻希美さんや田中みな実さんまでと年齢に幅がありますが、それぞれの方の生き方に“時代”が表れていると思いました。 ジェーン・スー:若いころにどんな時代を、社会を生きてきたかというのが、13人のみなさんそれぞれ違ったというのは、読み返すとあらためて思いますね。男女雇用機会均等法が制定されたのが、1985年のこと。齋藤薫さんが出版社に就職されたのはそれより前なので、30歳を過ぎた女性が会社で働くことがほとんど想定されていませんでした。一条ゆかりさんがデビューしたころも、漫画家という職業がいまよりずっと低く見られていたんですよね。では、いま30代の辻希美さんはどうかというと、若くして結婚し子どもをもったことで「ママゴト婚」と揶揄されました。いったい、どうすればいいのかと。本当にままならない世の中だと思います。でもそんな時代のなかでも不貞腐れず、みなさん自分の居場所を見つけてこられたのだと知りました。

彼女がいることの意味

JaneSu202303_1b――先ほどイノベーターという言葉もありましたが、この方たちがいるから後につづいた女性たちもいる、というエピソードも多かったのではないでしょうか。 ジェーン・スー:露払いをしてくれた、と思うんです。そして、ドアを開いてくれた。たとえば吉田羊さんは舞台でキャリアを積まれた後に、テレビドラマなどの映像作品に出演されるようになりました。年齢非公開でいらっしゃるけれど、テレビで拝見した吉田さんが10代や20代前半の若手ではないことは誰もがわかりましたよね。若ければ若いほどよいとされるような風潮があるなかで、その人の魅力でもってこんなにも活躍の幅を広げるんだ、というのを目にするだけでも、考え方が変わります。そういう人が“いる”のを見て、自分の居場所もあると感じられるようになるものだと思います。 ――吉田羊さんの活躍に、励まされた女性が多いと思います! ただ、インタビューでは劣等感も吐露されていて……。 ジェーン・スー:そうなんです、吉田羊さんが自分に自信がない人だと思わなかったですね。すごく意外でした。 ――はい、それによって身近に感じられました。
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山瀬まみ、北斗晶の仕事ぶりから私たちが学べること
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