――以前から子育ての日々をつづった漫画をインスタグラムなどで投稿していた今さんですが、「不登校」というテーマで漫画を描こうと思ったのはなぜだったのでしょうか?
今じんこさん(以下、今):不登校について周りの人に理解してもらえないことが多かったので、最初はそのことに対する悔しさや怒りをバネにして発信をしていました。不登校について世間から誤解されていることはすごく多く、それによって親も子も苦しむ負のループが生まれてしまっていると思います。
でも描いているうちに「本当は、ただみんなに知ってもらって手を繋ぎたかっただけだったんだ」と気がつきました。「不登校について知って理解してほしい」という気持ち以上に、「こういう生き方もあるんだよ」と知ってもらって「自分らしく生きよう」と思える方が増えるといいなと思うようになりました。
SNSやトークイベントなどで不登校について発信する活動をしていると、「不登校について知ることで視点が変わった」と言ってくれる方がたくさんいます。過去の私のように、ただ「知らないから誤解していた」だけなんだと思います。
――今さん自身は、不登校について以前はどんなイメージを持っていたのでしょうか?
今:私も夫も、「学校は絶対に行かなきゃいけない」とは思っていなくて、もともと学校教育には違和感を抱いているタイプでした。でも、いざ自分の子どもに「学校に行かない」と言われると気持ちが揺れてしまいました。

※イメージです
――もっちん君は、保育園時代はどんな様子だったのでしょうか?
今:保育園は楽しそうに通っていました。保育園では、子どものそのままの姿を肯定してもらえていました。外で遊ぶのが好きな子も、お部屋で本を読むのが好きな子も、みんな無理して誰かに合わせなくてよくて、好きなことをさせてもらえました。できなくてもやってみることに価値があるし、どうしてもやりたくないならその気持ちを尊重してもらえていました。
保育園のおかげで、もっちんの自己肯定感はすごく上がったと思います。小学校に通うことを楽しみにしていたのですが、失敗すると怒られたり、整列のとき間違えると「恥ずかしい」と叱責されたりと、大きなギャップを感じたようです。
――小学校に入学してからはどんな様子だったのでしょうか?
今:4月は普通に通っていて、「友達ができた」とか「給食が美味しかった」と、毎日楽しそうにしていました。それが5月に入って急に「明日学校行かない」と言い出したんです。「行きたくない」ではなく、宣言でした(笑)。
1年生の4月は「慣らし」の意味合いが強くて、「学校に楽しく来れればOK」という雰囲気だったから通えていたのかもしれません。特に私に不満を述べることもありませんでした。それでも1ヶ月の間に、彼の中で小学校がどんな場所なのか、だいたいわかったので「行かない」と告げたのだと思います。
――もっちん君は、小学校のどういうところが「行きたくない」と思ったのでしょうか?
今:「運動会の練習で怒られるのが嫌だ」と言ったことはありましたけど、それだけが原因ではないので、いろいろなことの積み重なりだと思います。叱られ方だったり、評価のされ方だったり、小学校に対するさまざまな違和感に対して慣れていく子もいます。子ども時代の私がそうでした。でも、もっちんは心の引っかかりを手放せなかったんだなと。私は、それはいいところだと思っています。
――小学校では自分が悪いことをしていなくてもクラス全体で怒られることがあったり、理不尽に感じる場面が多いかもしれないですね。
今:「理不尽に耐えるのも勉強だ」と言う人もいますが、我慢して文句を言いながら大人になるよりも、「理不尽だから自分はこうしたい」と自分の意見を持てることはすごい力だと思います。不登校の子どもが増えたことが問題視されていますが、自分で考えられる子どもが増えてきたのはすごく良いことだと思います。