――小学校1年生は休みがちだったもっちん君が、小学2年生から毎日学校に通うようになった時期のことを「新年度ハイだった」と描かれていました。新年度ハイとは何なのでしょうか?
今じんこさん(以下、今):学校が苦手な子によくあることなのですが、新年度から急に学校に行くようになるんです。そして張り切って通うのですが、大人にもある「五月病」のように、少しすると疲れてしまう子は多いようです。
子どもの「頑張りたい」という気持ちを否定したくはないし、「喜んでいるお母さんたちを傷つけてしまうかな」と思ったのですが、あえて描くことにしました。「新年度ハイ」というものがあることを知っておいてもらわないと、親が大喜びしてしまうことで、子どもが「休みたい」と言い出せなくなり、どんどん苦しくなってしまうからです。そうなると、親も後からつらくなってしまいますから。
――新年度になったからといって学校に行くつらさが解決するとは限らないということなのでしょうか?
今:クラスが変わってすごくいいお友達や先生に恵まれたり、新しい環境がフィットして本当に楽しいと思えるようになる子もいるようです。でも「学校のシステム」自体がしんどいと感じる子は、クラスが変わったからといって学校のつらさ自体が急に解決することは難しいと思います。

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――「新年度ハイ」は、どんなところが怖いのでしょうか?
今:子どもは心機一転して頑張ろうとするのですが、その気持ちが本人のできる範囲を超えてしまいやすいんです。親や先生が「学校に行って偉いね、頑張ってるね」褒めることで、子どもが疲れて休みたいと思っていても「お母さんや先生が喜んでいるから」と言い出せなくなってしまうのが「新年度ハイ」の苦しさです。
――子どもが学校に行くようになると親は嬉しい気持ちを隠すのは難しそうですが、今さんの場合はどうだったのでしょうか?
今:私もそこで「頑張ってるね」と言ってしまっていたし、当時はそれが寄り添いのつもりでした。でもそれは「学校に行けないあなたは頑張っていない」と言っているようなものだったと思います。
親が学校に行くことを目標にしているうちは、子どもに圧力をかけている自覚が持ちにくいし、「頑張って行ってほしい」という気持ちは抑えられません。今はそもそも学校に行ってほしいと思っていないので自分の態度にも出ません。
現在はもっちんが学校に行かないことを受け入れているので、「学校に行こうかな」と言い出してもドキッとはしますが、行きたいなら行けばいいし、行かないならそれでいいというフラットさで接しています。