キョウコさん（40歳・仮名）は、結婚して10年、9歳になるひとり娘を同い年の夫と共働きで育てている。彼女のセックスレス歴は8年に及ぶ。 「夫と仲が悪いわけではないんですが、産後、私が求めたら夫が『とてもそんな気になれない。きみは子どものことが気にならないのか』と責めるような目で見て……。私は母親として失格なのかと悩みました。いつの間にか私たちの間ではセックスがタブーとなってしまったんです」 　夫は目に入れても痛くないほど娘をかわいがった。夫として愛することはできなかったが、父親としては信頼したし敬意も抱いた。だから、親同士として生きていこうとキョウコさんは決めた。 「それでも女としての私は寂しくてたまらなかった。5年前、異動してきた上司がいるんです。私が新入社員のころ指導してくれた人で、また一緒に働けるのが本当にうれしかった。上司としての尊敬が恋心に変わるのに時間はかかりませんでした」 　苦しかったとキョウコさんは言う。だから久しぶりに夫を自分から誘ってもみた。だが夫はやはりその気にはなれなかったようで、彼女はさらに傷ついていった。 「ある夜、上司とふたりで飲みに行って酔ったふりをしてしなだれかかりました。彼はそのまま肩を貸してくれた。そのうちなんだか泣けてきて。『これ以上、自分の気持ちに嘘はつけない。あなたのことが好きなんです』と言ってしまいました」