
(C) 2023「それいけ!ゲートボールさくら組」製作委員会
――藤さんは60年以上、芸能界でお仕事されてきましたが、今でも鮮烈に残っていらっしゃる先輩を挙げるならどなたでしょう。
藤「石原裕次郎さんです。愚痴も言わないし、人のうわさも一切しませんでした。ふわっとしていて、そばにいるだけで太陽みたいなあたたかさを感じる人でした。すごい人ですよ。俳優としてもですけど、やっぱり大きな人でした」
――では先輩、後輩関係なく、最近お仕事された人の中から、「この人はすごいな」と思われた方を教えてください。
藤「浅野忠信さんですね。一緒に芝居を、映画を2本とテレビドラマもやりました。理由を言い表すのは難しいんですけど、なんだろう、結局、芝居の質というか、そういうものが好きなんですよね。浅野さんの芝居は無口だけど饒舌なんです。もちろん浅野さんだけじゃなくてね、すごいと思った俳優さんたちは挙げたらきりがないくらい、たくさんいますよ」
――「すごい」と思う方に、年齢は関係ないんですね。
藤「全く関係ありません。どんなに若かろうと一切関係ない。役者というのは、現場に行くと、そのたびに新鮮に感じられる仕事です。だいたい新鮮でなければこの歳までやっていません。飽きたらおしまい。僕の場合は、そのためにもちょびちょびやってるの。もともとたくさん働くのは好きじゃないしね(笑)。でもそれでずっと好きでいられる」
――なぜ役者の仕事が好きなんだろうと思いますか?
藤「やっぱり自分とは違う人間を演じるおもしろさ、気持ち悪さですかね。自分をどこへ持っていかれるんだろうという不安もあるし、他人の心の中へ入って行って、抜け出てくるときの気持ち悪さと快感。それを経験して、結果的に作品がお客さんに届いてくれたときの喜びなのかなと思います」
――ありがとうございます。最後に本作で、特に藤さんがお気に入りのシーンを教えてください。
藤「山口果林さんとの最後のシーンが特にいいなと思いました。あそこを『いいな』と思えるというのは、そこまでのプロセスがうまくいってるから、積み重ねがあるからこそです。やっぱり映画って、そういうものだと思いますね」

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<撮影・文/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。
@mochi_fumi