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K-POPアイドルが日韓の歴史発言をする背景とは?100年前から今まで生み出される悲劇

※写真はイメージです(以下同)

――日常に差別が組み込まれているということは、非日常の状態になればそれが一気に噴出する危険を孕んでいるのではないでしょうか。特に関東大震災……1923年に発生して10万人以上の死者、行方不明者を出した地震の直後は、差別がたくさんの悲劇を生んだことが本作を読むとわかります。 深沢:朝鮮人が井戸に毒を入れたなどのデマが流れ、それにあおられた人による朝鮮人虐殺が起きたことはよく知られていると思います。それと並行して、朝鮮人の女性が陵辱されたという記録も残っています。

朝鮮人以外も虐殺されていた

深沢:そこには朝鮮人への差別だけでなく、ミソジニーがあったことはあきらかです。 自警団を自称する男性たちが、つかまえた相手が朝鮮人かどうかを確認するため、ある言葉をいわせてその発音で判断しました。そうすると、沖縄や東北など独特の方言をもった人たちも発音がおかしいといわれ虐殺の対象となった、という話も伝わっています。 非常事態下で緊迫していると、発音する側はうまくいかないし、判断する側は興奮しているし、一度「朝鮮人だな」と決めつけられたらその状況から逃れることはできなかったと思います。 ――目をそむけたくなる、けど、読まなければいけないという想いに突き動かされる場面だったと思います。 深沢:日本人だから朝鮮人だから、というだけではなく、戦争や災害といった非常事態だからというのが大きいと思います。朝鮮でも8月15日に終戦を迎えたその日から、これまで虐げられていたことへの復讐という形で現地の日本人が殺される事件が相次ぎました。そうしたときには人の凶悪な一面が出やすいのだと思います。

100年前のヘイトスピーチ

深沢:これも人間の資質のようなものだからといって、人に暴力をふるったこと、命まで奪ったことを免責したいわけではありません。当時の朝鮮は日本の植民地だったので、こうした暴力の土台には支配-被支配の関係がある。そのことを踏まえ、何か明確な答えを提示するのではなく、起こったこと、起こりえたことをそのまま描きたいと思いました。 ――そうした問題は、現在にまで持ち越されていると思いますか? 深沢:いまの時代は100年前と同じことをくり返そうとしている、と思わされることがよくあります。ヘイトスピーチという言葉は当時はありませんでしたが、李方子と李垠夫妻に投げつけられた言葉を見ると、現代のそれとほとんど変わらないことに気づきます。 【深沢潮さんインタビュー前編を読む】⇒朝鮮王族と結婚した日本の女性皇族。その数奇な運命をたどって見えてくるもの
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知らないと、齟齬が生まれる
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