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朝鮮王族と結婚した日本の女性皇族。その数奇な運命をたどって見えてくるもの

深沢:戦時中の資料を読むと、朝鮮に派遣された日本人の子どもが、地元の朝鮮の子どもたちと仲よく遊んでいるという記録が少なからずあります。楽しい思い出になっているようですね。でも、その子たちのお兄さんやお姉さんが徴用されているかもしれないというところには目がいかない……支配-被支配の構造のうえに成り立っている関係だからです。

社会構造は見えにくい

深沢:先ほどお話ししたとおり、それが終戦の一夜にして立ち場が逆転するわけですが、これも構造が変わったがためで、でもその構造はどうにもできない。だからそこにいる個人に矛先(ほこさき)を向けることになります。 現在も、同じことが起きていますよね。現実につらいことがあってもその背景にある社会構造には目がいかないから、たとえば「女性ばかり優遇されていてズルい」のように身近なところに憎悪が向きます。 日本 韓国 日韓 日の丸 国旗 太極旗――その方子さんが、構造の問題に気づくきかっけになったのが義妹の結婚だったのではないでしょうか。夫・李垠(り・ぎん/イ・ウン)の妹で、いうなれば“お姫さま”ですが、日本に連れてこられて自由がまったくない生活を強いられ、精神に不調をきたし、本人の意向はまったく無視して政略結婚が進められます。 深沢:徳恵翁主(王女)、韓国では「トッケオンジュ」と呼びます。晩年は離婚して韓国に戻り方子さんと一緒に暮らしましたが、精神の健康を取り戻すことはなかったようです。取材するなかで、方子さんは徳恵翁主をずっと気にかけて見守っていたと聞きましたが、そこには結婚を止められなかったことや病院に入れてしまったことなど、いろんな後悔もあったのでしょう。

忘れられた王女

深沢:トッケオンジュは韓国でもその存在はほとんど知られていなかったのですが、2016年に「ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女」という映画が流行して、ブームがおきました。トッケオンジュを「愛の不時着」のソン・イェジンさん、李方子さんを戸田菜穂さんが演じているんですよ。
『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

――日本でもかつては、夏になると戦争をテーマにしたドラマや映画が公開されて、歴史を知るきっかけになっていたと思うのですが、最近はあまり見なくなりましたね。韓国ではいかがでしょうか? 深沢:韓国でも若い人はあまり歴史に興味がないかもしれません。でも、近現代史は学校でしっかり習いますし、エンタテインメントの世界でくり返し描かれるので、一定の知識はあると感じます。 【インタビュー後編を読む】⇒K-POPアイドルが日韓の歴史発言をする背景とは?100年前から今まで生み出される悲劇
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エンタメ作品で知る朝鮮半島の歴史
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