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朝鮮王族と結婚した日本の女性皇族。その数奇な運命をたどって見えてくるもの

深沢:最近ヒットしたものだと、植民地時代の映画『マルモイ』が記憶に新しいですね。ごく最近では、安重根を主人公とした映画『英雄』があります。
『マルモイ ことばあつめ』インターフィルム

『マルモイ ことばあつめ』インターフィルム

女性の目から見た歴史

深沢:描き方にも変遷があって、かつては、北朝鮮の人は悪人とされることがほとんどでしたが、日本でも2001年に公開されたイ・ビョンホン主演の『JSA』あたりから、「北の人たちも私たちと同じ人間なんだ」という描写に変わりました。 ――本作は方子、マサ、徳恵のほかにも女性の登場人物が多く、これまでとは違う視点で歴史が見直されていると感じました。方子さんの結婚相手である李垠は李氏朝鮮最後の王として資料的な資料も多く、これまでたくさんの人が書いてきた人物ですが、方子さんの目をとおして見ることで新たな発見はありましたか? 深沢:李垠さんは、弱い人として描かれることが多いと思います。日本から求められることに従いつづけたからなのでしょうけれど、その実、感情や考えを自分ひとりの内に溜めて溜めて、耐えつづけた人なのではないかと思いました。自身の言動が国同士の関係に影響すると考えると、うかつには振る舞えません。私はそこに、強い意志を感じました。

睦まじい夫婦の消えない寂しさ

深沢:わずか10歳で日本に連れてこられたとき、父王から「忍」の一字が書かれたものを渡され、それを後に妻の方子さんに見せるんです。生涯耐えつづける強さがあった人だと思います。 方子さんにも「一緒に生きる」という想いはあったと思うのですが、それでも話せないことは多かったでしょう。仲がよい夫婦ではありましたが、一緒にいる人のなかに触れられない部分があるのは、方子さんにとってはひとりでいる以上の寂しさがあったかもしれません。 【インタビュー後編を読む】⇒K-POPアイドルが日韓の歴史発言をする背景とは?100年前から今まで生み出される悲劇 <文/三浦ゆえ>
三浦ゆえ
編集者&ライター。出版社勤務を経て、独立。女性の性と生をテーマに取材、執筆を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(宋美玄著、ブックマン社)シリーズをはじめ、『50歳からの性教育』(村瀬幸浩ら著、河出書房新社)、『リエゾン-こどものこころ診療所- 凸凹のためのおとなのこころがまえ』(三木崇弘著、講談社)、『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社)などの編集協力を担当。著書に『となりのセックス』(主婦の友社)、『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)がある。
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