『THE SECOND』元人気お笑い芸人が感じた「ほかの賞レースとの決定的な違い」
結成16年以上の漫才師がセカンドチャンスをめぐって競う『THE SECOND~漫才トーナメント~』(フジテレビ系)が5月20日に放送され、ギャロップが初代王者となりました。
かつてピン芸人「大輪教授」として活動し2007年R-1ファイナリストに選出され、現在はお笑い事務所の若手芸人のネタ見せもつとめる構成作家の大輪貴史さんに、決勝戦や観客が採点する方式について解説してもらいました。
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――決勝戦のギャロップVSマシンガンズは、“作り込み”のネタ対アドリブネタのようにも見えましたがいかがでしたでしょうか?
<近年稀(まれ)に見る異種格闘技の名勝負でした!
その場の雰囲気を読み取りながら魂の叫びをしたマシンガンズと、喋りの技術と緻密な台本で笑いを爆発させたギャロップの対決。とても同じ競技で戦っているとは思えませんでした。「『ちびまる子ちゃん』と『ガラスの仮面』、どっちが面白い?」みたいな。そんなこと聞いたら「どっちも面白いけど、なにその質問?」と言われるだけです。
ただ、優劣をつけなくてはいけません(会場の審査員はどちらにも3点を付けることができますが)!
「寝転がって見てたらマシンガンズの勝ち、座って見てたらギャロップの勝ち」といったところでいかがでしょうか? マシンガンズは、どこからがアドリブでどこからがアドリブじゃないかわからない漫才で、ネタがないことすら笑いに変えていきます。「こいつらアホだな~(笑)」と思わせ、「俯瞰(ふかん)で他人事のように見ると最強」でした。
逆にギャロップの漫才は、料理人に弟子入りするくだりから「え? まだ行くの? いつまでやんの? どうすんのこれ?」と思わせ、見ている人が没入しきったときに「パンが1番おいしかったね~」で大きな笑いを作りました。お客さんを引き寄せて引き寄せて目の前で大爆発させます。「夢中になって前のめりに見ると最強」な漫才です。
会場の審査員は当然、座って真剣に見ています。今回はギャロップに軍配が上がりました。会場審査員がみんな寝転がって見ていたら、勝敗は変わったかもしれません(笑)。>(大輪貴史さん 以下、山カッコ内同じ)
――「THE SECOND」の大きな特徴として、1対1でタイマン対決のトーナメント方式がありますが、いかがでしたでしょう?より盛り上がったとみる向きや、トップバッターが不利になりにくいといった声もあるようです。一方で、「関西ダービー」ことギャロップVSテンダラーでは、一方しか2回戦にあがることができなくて寂しいといった面もあります。
<確かに、他の賞レースに比べて「トップバッターがあまり不利にならない」面は非常に良かったと思います。しかし、「後攻有利」は少し否めない印象を受けました。
審査基準の説明の際に、宮司愛海アナウンサーが「絶対評価で点数をつけてください」とアナウンスしていました。相対評価でないのであれば、個人的には、「先攻のネタが終わった時点で、先攻の得点を付ける」方式にしてもいいのではないかなと思いました。ネタが終わってから点数をつけるまでの時間は平等にする、という考え方があってもいいのではないでしょうか?
トーナメントで、1組最大3ネタ披露となると、「勝負ネタの数」「飽きさせない力」など、芸人側の腕が問われる面が出てきます。しかし、ベテランの大会の「THE SECOND」ですから、そこは制作されている側の芸人への強い信頼があったのだと思われます。
マシンガンズは「勝負ネタの数」で弾切れしましたが!(すみません、ここは旧知の仲なので厳しいことも言わせてください(笑)! でも、弾切れしても銃の柄で殴りに来てました! かえってマシンガンズのいいところが出ていました)
とにかく、他の大会では芸人側への負担が大きいので、若手だとなかなか難しい方式になります。
逆に、マシンガンズ西堀(亮)さんが決勝で「ネタがないのにここに立ってるメンタル凄くないか?」「優勝さしてくれ」と言ったパワーワードを連発したところが、「THE SECOND」の醍醐味(だいごみ)だったかもしれません。
また、「関西ダービー」と呼ばれたギャロップVSテンダラーのように、一方が負けてしまうことが惜しいときはありますが、同時に人間性やドラマを感じさせる瞬間が多く、残酷ではありますが、見応えのひとつになりました。>
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