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「俳優・永山瑛太の代表作は?」に答えにくい理由。カンヌ受賞作でも見せた“圧倒的な振り幅”

「セリフでは語られない心情」を感じさせる表現力

それは、“めんどくさい男”がもつ“不器用さ”を永山が丁寧に表現しているからではないでしょうか。みちに語りかける口調や、ちょっとした“間”。そこにセリフでは語られていない、彼女への愛情や後ろめたさ、戸惑いを感じるのです。 特に印象的だったのは第7話、陽一の浮気を知って家出をしたみちが、一晩明けて帰宅した朝のシーン。みちが家に入り、荷物をまとめて再び家を出ようとするまでの約2分30秒。何か言いたげに、どこか申し訳なさそうに、でも言い訳がましい様を、永山はひと言も発さず、まばたきや仕草だけで表現しています。
セリフなしでも、心情を十二分に視聴者に伝える永山。その繊細な表現力があるからこそ、彼が演じるキャラクターは視聴者に愛されるのです。

「永山瑛太の代表作は?」と聞かれると回答に困る

もう一つ、彼の凄さに触れなくてはなりません。それは“作品に溶け込みながらも、たしかな存在感を発揮する力”です。 多種多様な役どころを演じてきた永山ですが、「彼の代表作は?」と聞かれると回答に困ります。キャリアが長いというだけではありません。主役であっても、脇役(助演)であっても、いずれも永山が放つ存在感が絶大すぎて、とても絞れないのです。 記憶に新しいのは、昨年話題になったドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(フジテレビ系)。登場時間がごく短かったにも関わらず、強烈な印象を残して視聴者を戦慄(せんりつ)させました。
今秋に新作映画の公開を控えている『ミステリと言う勿れ』(同)のドラマ版で演じた犬童我路(いぬどう・がろ)役でも、原作とはひと味ちがう、永山にしか醸し出せない独特の雰囲気で異質なキャラクターを演じました。しかし、それが作品の世界観を損なったり、悪い意味の違和感を与えたりすることはありません。だから、視聴者は作品そのものを楽しむことができるのです。
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世界観を守りながら、インパクトを残せるのはなぜか
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