この数年で価値観は大きく変化しています。音楽業界はもちろん、影響は多岐にわたります。
そのひとつがお笑いです。東野幸治や千原ジュニアなどは、芸風をアップデートさせる必要を訴えています。
東野は2020年5月13日に公開した自身のYouTubeチャンネル『東野幸治の幻ラジオ 第32回』で、性的なギャップを利用した「オネエキャラ」いじりはもはや通用しないと語りました。
<昔だったら『オッサンがなに言うてんねん』とか『オッサンがなにしてんねん』とか、『オッサン』という言葉を使っていたらだいたいオチてたんですけど、いまはそのワードは言ってはいけません>
手っ取り早く笑いを取るには、いわゆる「見た目は男性、心は女性」の人に対して「オッサン」とツッコむのが“正解”なのでしょう。しかし、今は笑いよりも大事にしなければならないことがある。その意識が社会全体で共有されつつあることを東野は言っているのですね。
同様に千原ジュニアも、コンプライアンスやポリティカル・コレクトネスなどでどんどん浄化されていく芸能界を受け入れ、こう語っています。
<いつの時代も『昔のほうが良かった』という奴らが必ず出てくる。でも改善を求めたのはお前らちゃうんかって思いますね。それでもそれをクリアしながらちゃんとほんまに面白い笑いを起こす芸人はいっぱいいますよ> (『Yahoo!ニュースオリジナル特集』2023年5月26日配信)
それゆえに山下達郎の発言は大きな反発を招きました。若い世代が新しい表現の方法を探っていくなかで、開き直っているように見えてしまった。純粋にジャニー喜多川氏やジャニーズ事務所への恩義を表明したかったのだとしても、結果として時代の流れに抗っているように映ったからです。
ポップスの作家は、同じ時代を生きる人々の心情や志向を曲に反映させるのが仕事です。だとすれば、一連の発言は致命傷だと言えるのではないでしょうか。
ソングライター、山下達郎は同時代性を失ってしまったのです。