自分を肯定できるのは身体を許すことだけ、軽度知的障害の女性のストレートな恋『初恋、ざらり』から目が離せない
“普通”を極めた岡村の人生
“普通”への憧れと、“普通”に囚われた人生が入り混じる
自信がない、でも状況を打破したくて苛立ちも感じている、そんな有紗の内に籠る感情を、小野は目の色と握る拳の強さでこちらに訴えかけてくる。ともすれば白々しくなってしまいそうな周囲とのズレの表現も、絶妙な塩梅でリアクションを調整しているように感じる。 もちろん演技巧者の風間俊介も忘れてはならない。どこか危うさを秘める演技も繊細な演技もこなす風間だが、今回の岡村はどこまでも“普通”。裏があるようには見えず、同時に心配になるくらいお人好しでもある。これはこれでちょっと貴重なんじゃないだろうか(個人的には、そんな岡村が結構なヘビースモーカーで、風間がタバコを吸うたびに、ギャップにやられていたりもする)。 物語は3話まで進み、2人は付き合うことになる。両想いを確かめ合ったものの、「彼女になって」と言われていないから関係が進展していないと思っていた有紗と、すでに付き合っていると思っていた岡村。 その様子がじれったく、見ている側としてはかわいらしいと思ってしまうのだが、当人たちにとっては大きな問題である。 “普通”になりたい有紗と、“普通”に囚われた岡村。今はまだお互いに持っているものさしが、全然違う。 でもそれは有紗に障害があるからとか、岡村の年が10こ上だからとか、そういうことではない。これから2人は、言葉と行動でもってその差異を埋めていくのだろう。程度の違いはあれど、人間関係を築く上で誰もがそうするように。 ただ、そこには決定的な優しさがある。わたしはその優しさに触れたくて、これからもこのドラマを観るだろう。 <文/あまのさき>
あまのさき
アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。
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