
審美系競技の採点は審査員の主観的な要素が大きく影響することから、一般的に「理想的」とされている低脂肪量・低体重を維持するため、食事制限や過度のトレーニングを行う選手も少なくありません。
こうした状況は選手の健康を害するリスクがあるとして問題視する声が高まり、近年少しずつ見直しが図られているといいます。
「最近ではスケート連盟が選手の栄養指導を強化し、健康的な骨密度を維持してもらおうと呼びかける動きが見えます。骨密度が減少する原因である低エストロゲンは、生理不順の原因とも関係しているので、女性選手の身体を守るためにも状況が改善されてきていますね。
アイスダンスに関しても、以前は線の細い体型が“美しい”とされてきたのですが、今では体つきがたくましい女性選手が世界大会でトップの成績を残すようになってきたりしています。個人的にはすごくいい流れになってきていると感じるので、嬉しいです」

そしてフィギュアスケートの審美基準における変化は、体型以外の側面にも見られているのだそう。
「シングルは、すでにアジア人の選手が素晴らしい結果を残していますが、アイスダンスはまだまだ白人が優位なところもあり、国際大会でもアジア人が3人いれば『今回はアジア系が多いね』と言われる状況です。私はいつも有色人種の選手と、国を超えて『私たちの美を表現していこう』と、励まし合っています。
私は、体型や肌の色など人それぞれの美があり、もっと多様な美しさがあるべきだと思います。同じように考える選手や指導者は、ここ最近でだんだんと増えてきているような実感がありますね」