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実生活では“完璧な夫”ながら不祥事だらけのダメ議員を演じ切る。エリート俳優の力技とは

現実とは打って変わる役柄

『離婚しようよ』は、大物政治家だった父親から地盤を引き継いだ二世議員の東海林大志(松坂桃李)と人気女優の黒澤ゆい(仲里依紗)夫婦が主人公。  ゆいのライブ配信で夫婦揃っておしどりぶりを演じるが、配信ボタンを切った途端に、底冷えする日常の空気が流れる。  失言、読み違い、プチ不倫など、不祥事まみれの大志は、支持率を維持するためにどうしてもゆいの力を必要とする。CM広告契約やイメージを守りたいゆいは政治家の妻としての役目もいやいや全うする。  愛し子をベビーカーに乗せていた現実の松坂とは打って変わる役柄だ。妻役の仲だって、2013年に俳優の中尾明慶と結婚していて、今年で夫婦生活10周年を迎えている。なのにそんなふたりがドラマの世界だとこんな悲惨な夫婦関係を演じているのだ。

身近に引き寄せる力技

 俳優とは自分に似た役柄を演じることもあるが、そうではないときの方が圧倒的に多いかもしれない。本作の大志役を考えると、これは松坂にとってある意味では似てもいるし、また同時に似てないとも言える役柄なのだと思う。  と言うのも、有力な地盤を引く大志はエリート議員だが、松坂のキャリアもエリートな俳優道をひた走ってきたところがある。2009年のデビュー以来、とにかく主演作品を連打してきた輝かしさを思い起こす。  一方で主演だけでなく助演作にも自主的に出演しようとする姿勢が他の俳優にはあまり見られない唯一無二の魅力でもある。ダメダメ議員ながら、どんな恥を忍んででも地元での政治活動には粉骨砕身になる大志の直向きさとどこか似ている気がする。  夫としてはもちろん松坂の方が完璧に違いない。だから全体として似ているわけではないが、まったく遠い存在であるはずの大志役を見事に身近に引き寄せる力技は松坂にしかできない。
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松坂桃李の“お家芸”
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