
『まだ結婚できない男』公式サイトより
阿部の名演を代表する桑野役を筆頭に、彼は役柄を通じて、虚飾なく真に誰かを包み込む雄大な温かみに満ちている。年齢とともにその味わい深さが、倍々に増している気がする。
『結婚できない男』と続編『まだ結婚できない男』(関西テレビ、2019年)では、実に13年のブランクがある。この間、まぁとにかくあらゆる作品に出演を続けた阿部だが、一番の変化は顔の表情に表れている。
鼻から上と下で違う演技をしているのだ。口元では薄ら笑いを浮かべ、目尻には経年のシワをいくつも刻むようになった。ただ目力だけは変わらない。阿部の目に注目すると、彼の演技の本質がよくわかってくる。
さらに阿部は目が覚めるようなアクションを見せたりもする。
タイのアクション映画『チョコレート・ファイター』(2009年)で演じた鋼のようなヤクザ役を思い出してもいい。いったい、どこまで衰え知らずなんだ。同作から現在まで全く変わっていないようにも思える。
目尻のシワが増えるなど、年齢的には確かに若くはないのだが、いつまでも若々しい人ではある。彼のアクションの切れ味と年齢はどうも比例しない。
実は他の人とは違う年の取り方なのか。おそらく樹齢300年の大木のように、気の遠くなる俳優人生を刻み続けるのだろう。
<文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:
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