本作では最終話を除き、冒頭で毎話ごとに違う登場人物が語り手となり、自身の背景や心情を語る導入方法が用いられました。この手法だったからこそ、展開される物語のなかで登場人物たちから発せられる“台詞”に、視聴者が感情移入しやすかったと思います。
特に、女性の生き方が多様化し、仕事に出産、子育てと常に何か選択を迫られ続ける私たちに、そっと寄り添う“台詞”が散りばめていたことも印象的でした。きっと視聴者それぞれに、響いた言葉は違うでしょう。
筆者が全話を通して忘れられないエピソードになったのは、有栖の子どもを取り上げた産婦人科医であり、瞳子の主治医かつ親友・薫(松本若菜)の話。第9話は、薫の「
人生は選択の連続だという。そしてその選択とは、何かをあきらめることでもあるのだ」という語りからはじまりました。
加瀬との結婚、妊活を考えはじめていた瞳子を、物語の中盤で呼び出す薫。ワインを飲みながら薫は告白します。「今日はね、卒業記念日なの。長い長ーい不妊治療の卒業」。瞳子は、
薫が8年ものあいだ不妊治療をしていたとは知らず、子どもはつくらない主義だと思い込んでいたのです。
タイミング法や体外受精などあらゆる治療をおこない、やっと妊娠したと思ったら流産。そんな経験をしながらも、不妊治療を続けてきた薫。そして夫が「もうこれ以上、薫の体に負担になることはやめよう」「これからは、今まで以上にふたりで楽しく生きていこう」と言ってくれたことであきらめる決断をしたのでした。
ここまでずっと、産婦人科医として、親友として、有栖と瞳子に寄り添ってきた薫に、そんなバックボーンがあったなんて。でも実際、人生を左右するような選択を、軽々しく人に相談できる人は少ないように思います。なぜなら、それは相手のことを気遣って、遠慮してしまうから。薫もきっとそうだったのではないでしょうか。
薫が、親友の瞳子に「私、頑張ったよね」と涙ながらに甘えたシーン。そして翌日も妊婦さんと向き合う薫の笑顔は、とても印象的でした。
私たちはもっと、甘え合ったり、助け合ったりしながら生きてもいいのではないか。本作は全話を通して描かれた、登場人物の一人ひとりの選択や、大切な人に寄り添う姿から、そんな風に感じました。
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