マスクで学校生活を送ることに疑問を感じながらも、前代未聞の事態に現状を受け入れるしかなかったことはみな同じ。ですが上田さんの娘はそのままクラスに馴染み切れず、学校で特定の友人ができるまでに相当の時間がかかったようです。

そんなマスクでの学校生活を見て、上田さんは疑問を感じたと言います。
「
学校は勉強する場所ではなく、子どもたちが小さな社会を経験する場所でもあります。教室のエアコンが効かないほどに換気をした中で、徹底してマスク着用を指導し、おしゃべりを注意され、監視された中での学生生活はとても窮屈そうでした。
特に、外で行う体育の授業まで不織布のマスクを着用するよう当時指導していたのは、
熱中症の危険もあり、呼吸も苦しくなるなど、感染リスクとは別の心配があるのではと思いました」
感染の心配はあれど、マスク顔で毎日を過ごす学校生活に違和感を抱き続けていた上田さん。ですがそんな上田さんをよそに、娘はマスク生活にどんどん慣れ、それが徐々に当たり前になっていったそう。
「娘には『暑くて苦しいときはマスクを外したほうがいいんじゃない』と言うと『
マスクをする決まりだし、先生に注意されるからしなくちゃいけないんだよ』と返されて、なんとなく恐怖心を覚えました。自分が苦しくても、決まりだからと我慢し続けていたら、大人になって理不尽な命令を受けても、
違和感を押し殺して我慢するようなってしまうのでは、と不安になりました」
わたしたち大人は、マスク生活が非日常であることを体感として分かっています。ですが子どもたちにとってはまだ「これからの日常」を創り上げていく時期。「先生の言うことを聞かなければいけない」と考え、体育の時間であろうがまだ社会経験が少ない子どもたちは、苦しくてもマスクをすべきという命令を当然のこととして受け入れていき、それが「日常化」していってしまったようです。