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「嫌われたら終わりと噂を流されて…」ヒエラルキートップの苦悩を知って涙|ドラマ『いちばんすきな花』

ずっといてもわからないことがある

第1話、「はじめまして」の4人でのテーブルでの会話シーンでは、紅葉の幼なじみで、子ども時代からの紅葉の印象も知っているゆくえが、「2人組を作るのが怖かった」との話題の際に「紅葉には縁のない話だね」と言った。 ちびっこ相撲で、小さな子が勝った“感動エピソード”に、敗者となった大きな子の恥ずかしさに目を向けたゆくえでも(ゆくえの心にしこりとして残ったのは、自分の視点が少数派だという事実も大きい気がするけれど)、いつもみんなの輪の中にいた「全人類が友達の(ような)紅葉には縁のない話だね」と、紅葉が2人組を恐れているとは想像できなかった。でも紅葉は「嫌われてるわけじゃないけど、誰も好んで自分のこと、選ばない」と胸の内を告白した。

目に見えていることなんて、ほんのわずかなのだと改めて知る

当たり前すぎることだけれど、目に見えていることなんて、ほんのわずかでしかない。 「2人が苦手」な彼ら。ずっと“もやもや”を抱えてきた感覚もとても近しい。だけど、同じ時代に同じクラスにいたとして、友達にはなっていなかっただろう。それぞれに抱えてきた“もやもや”を言葉にできるまでに時を過ごして、いま、偶然、他人として集まったから(幼なじみはいるが)、やっとかけがえのない4人になろうとしている。 1話2話と、4人は椿の家で自分の席に着いた。これからも彼らは、いろんな“もやもや”を表に出しながら、「今度」を重ね、関係性を変えていくだろう。 その先に何があるのかはまだ見えないが、本作は、4人をスポット的にさまざまな角度から多くの光で照らしつつ、それを見ている私たち自身を鏡のように映す。それだけでなく、たとえば私にとっての今回の夜々への涙のように、自分とは全く異なる、いままで見えていなかった相手の輪郭まで照らす。そんな多くの可能性を持つ作品かもしれない。 <文/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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