とかく女性は感情的になることも少なくない生き物。まして妊娠中に夫の不倫が発覚したら、パニックになるのは当然。悲しさと悔しさと怒りで混乱するババロアさんの前に現れたのが、パンナコッ太(た)君です。前作でも活躍し、このシリーズで一番頼れる人物で、私達の意識をフラットにしてくれる人物です。
冷静沈着で聡明なパンナコッ太君の力を借りて、ババロアさんはカス寺さんの身辺調査を開始。やがて衝撃な事実に直面してしまいます。
ババロアさん、カス寺さん、パンナコッ太君、そしてカス寺さんの不倫相手のミル子さん。スイーツなネーミングとほのぼのとしたイラスト、テンポのよい漫画に、私達の心はつい和(なご)まされてしまいますが、語られているのはエグい現実です。
落ち着いて考えてみると、これってかなりリアルなのです。ユルふわなオブラートで包んでいるのは、身を切るほど残酷な人間の生態。ページをめくるたびに、私達の心は串刺しになっていきます。
血も涙もないと痛感しながらも引き込まれてしまうのは、誰もが経験しうることだから。「絶対に不倫なんかしない」「絶対に不倫なんてされない」とは、誰も断言できないからではないでしょうか。
今作ではさらに新しいワードが登場します。「ポリアモリー」です。数年前からデフォルトになったポリアモリー、つまり複数愛ですが、間違った解釈をされる方もいるのですよね。
今作の不倫夫・カス寺さんがまさにそう。ポリアモリーの定義を完全に取り違えているのです。
カス寺さんの不倫相手、ミル子さんはカス寺さんのさらに斜め上を行くツワモノ。妻ババロアさんのことを「チャーミングな人」とか「迷惑はかけません」などと言い、謙虚にふるまいつつ、しっかり上から目線。思わず「負けるな! ババロアさん」とこっちまで熱くなってしまいます。
私自身はモノガミー(単数愛)ですが、ポリアモリーの考え方や実践する人々を否定しません。でも、複数愛を都合よく利用するのは単なる自己愛です。ポリアモリーの風上にも置けませんし、ポリアモリーの方々にも失礼です。