
大奥(C)NHK
戌の日(安産を願う日)までには、また姿を見せると言った家定だったが、一向に現れぬまま、時は過ぎていく。このとき庭に咲いている紫陽花の花言葉は「辛抱」に加え、「無情」がある。表の政治もなにやらおかしい。しかし上様の様子を井伊は「お変わりなく」と言うばかり。
だが、そこに胤篤付きの御中臈であり、実は薩摩の隠密である中澤がやってきて、胤篤は事実を知ることになる。その際、胤篤は家定に何かあったのではないかと胸騒ぎを覚えるも、それが養父・島津斉彬の急死の伝えだったことに、少しの安堵を見せている。そして父の死ではなく、幕府に向けた“軍事調整”をしていたことに反応。さらに悔しがる中澤の次の言葉を聞く。「今江戸城には主はおらぬ。これ以上ない機会であったのに」と。
この瞬間、胤篤の瞳が色を失った。そこから家定とお腹の子の死を知った胤篤が、取り乱せば取り乱すほど、家定への愛の深さが伝わってきた。同じ時を刻んでいこうと誓い合ったばかりだからこそなおのこと。同時に、中澤イコール薩摩の津村重三郎の、主君への忠義と、家定を“徳川の女”と蔑む物言いに男尊女卑が見えるシーンでもあった。
“敵”を迎え撃つ気満々だった瀧山が、胤篤のすぐ傍らに
そこから政治は慌ただしく動いていく。胤篤に、家定の志を継ぐと誓った福子姫が、徳川家茂として14代将軍に就任。そんな福子に“父として”導いてほしいと請われた胤篤は、天璋院として、大奥に残ることを決めるのだった。
第18話は、胤篤を見守り続けた瀧山の姿も印象に残った。胤篤が大奥に残ったのは、瀧山の存在も大きい。当初、薩摩からやってくる“敵”を迎え撃つ気満々だった瀧山だったが、正弘と家定の姿に、自身の見る目を変化させ、胤篤を受け入れていく。そしてついには、誰よりも頼れる、家定と胤篤の味方となり、家定亡きあとには、胤篤のすぐ脇に寄り添う、無くてはならない存在となった。
そうした変化を、古川が愛嬌を含ませ、時に繊細な瞳の揺れや立ち振る舞いで表現してきた。辛さのあまり胤篤が投げてしまった家定の形見である懐中時計も、瀧山が預かっているが、今後、どこかで登場してくるに違いない。どんな効果をもたらしてくれるだろう。