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NHK『大奥』、女であることを奪われた“堀田真由”家光、体の中は空洞だった“岸井ゆきの”和宮

天璋院は実際にさと姫という猫を可愛がっていた

 ちなみに、これまでの映像作品などでもたびたび登場してきた、和宮と天璋院(福士蒼汰)との初対面シーン。和宮への敷物が用意されていなかったために、和宮が怒って帰った史実エピソードが、本作でも登場した。「あんたらの気持ちはよう分かったわ」と言う和宮から、高いプライドが見えるだけではない。ここは和宮と、正面から向き合う大事な機会だったことは事実だ。  余談だが、福士がお万の方と天璋院の二役を務めることになったのは、後に決まったこと。しかし福士が猫を抱いている姿には、シーズン1から見ているファンは否応なく反応してしまう。天璋院が猫を可愛がっていたことは史実として残っており、ドラマのために登場させているわけではないのだけれど、巡り合わせを感じてしまい、なんとも不思議だ。

和宮の空洞を、母の愛とは違う愛が満たし始めた

大奥(C)NHK さて、そんな和宮の前に座って、しっかりと彼女を見つめたのは家茂だった。もっとも印象的だったのが、1対1で正面から相手と向き合い話した、褥(しとね)での囲碁の場面である。「宮さまが江戸に来てくれたおかげで、なんとか公武合体の体裁を保てている。大事な、かけがえのないお人」と言う家茂に、和宮は江戸に来た本当の理由を明かした。 「本物の和宮さんな、ほんまは今も生きてはるんよ。わたしはただ、母を独り占めしたくてここに来たんや」と。そして身の上と、江戸に来た“しょうもない企み”を語った和宮に、家茂は泣きながら「その“しょうもない企み”のおかげで、(本物の)和宮さまは亡くならずにすんでいる。わたしは人を死の淵に追いやらずにすんだのです。宮さまは知らぬうちに多くの者を救ってらっしゃるんですよ」と。 「そんな風に考えるん、上さんくらいやで」と返しながら、さらに家茂の言葉に、道中を思い返す和宮。そして家茂は、世の人にとり「戦を避けるために江戸へ下ってくださる勇気ある宮さま、これが光でなくてなんでしょう」と言い、和宮を“世の光”と称した。「あんたは」と涙を隠す和宮。 “家の光”となれず、影の存在だった彼女が、“世の光”と言われた嬉しさ。しかしそうして家茂が世界を、視界を開いてくれたこと、何より彼女をまっすぐに見つめてくれたことこそが、響いたはずだ。和宮の空洞を、このまま母の愛は埋めてくれないかもしれない。でも、違った愛が満たし始めたことを、和宮は感じているはず。その変化は、周囲にも波及するだろう。ちなみに天璋院の猫に続き、囲碁に関しても、実際の和宮と家茂もともに好きだったという。  さて、政治では一橋慶喜(大東駿介)が表舞台に登場し、家茂が孝明帝(茂山逸平)のもとへと上洛しなければならなくなった。人をまっすぐに信じる家茂は、すべてをいい方向へ行って欲しいと考えているが、そう事が上手く進むとも思えず……。難題山積みの中、ついに残すところあと2回である。 <文/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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