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NHK『大奥』、女であることを奪われた“堀田真由”家光、体の中は空洞だった“岸井ゆきの”和宮

大奥(C)NHK【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます  よしながふみ原作コミックを実写化し、強い支持を集めてきたNHKドラマ『大奥』が終盤に入った。28日に放送された第19話では、公武合体により、帝の弟君であるとして迎えられた和宮(岸井ゆきの)が偽物で、しかも女性だったことが発覚する。  すべての事情を知ってなお、優しく受け止める14代将軍・徳川家茂(志田彩良)。和宮の心が解きほぐれていく姿に、人が人と向き合う美しさを見た。

男と偽った和宮だが、そもそも彼女にとってガワなど意味がなかった

 朝廷から降嫁してきた和宮は偽物だった。母である観行院(平岩紙)と乳母の土御門(山村紅葉)によれば、本物の和宮が首をくくり、ほかの男子を出せぬ事情があったために、実の姉が代わりとなって来たのだという。帝も事情を知らぬ一大事に瀧山(古川雄大)は激怒するが、家茂は、このまま和宮が女性であることを秘すことにするのだった。  女将軍の始まりとなった3代家光(堀田真由)。彼女は当初、その素性を隠された、女であることを奪われた人だった。無理やりに髪を切られ、男のなりをさせられ、名前も奪われた。有功(お万の方)と出会い、千恵として受け止めてもらったうえで、将軍・家光として自分の足で皆の前に立てるまでに、多くの苦しみを背負ってきた。その姿からは、女であることを奪われる辛さや、何より名前を奪われることで自己を失う恐ろしさが伝わってきた。  和宮からは、またまったく違った苦しみが伝わって来る。彼女は、何より母が自分を見てくれることを欲していた。そのためには、女としてのなりや、名前を捨てても構わなかった。自分の立てた企てなのだから、当然ではあるものの、それにしても彼女からは男のなりをしていることへの抵抗は、露ほども感じられない。むしろ彼女にとって、はなからガワに大きな意味はなかった。

和宮が欲していた場所に座ったのは、太陽のような家茂だった

大奥(C)NHK 幼い頃、可愛らしい着物を着て、遊び道具を目の前に置かれても、母の愛がなければ、体の中は空洞だった。手に欠損があった自分を、生まれなかった子として扱い、弟・和宮だけを“この家の光”として慈しんできた母。宮さんは「あんたみたいに肝の据わった子と違う」「優しくて細やか」「私が守ってあげへんと」と言う母を、彼女は決して恨むでなく、ひたすら愛を求めた。自分をちゃんと見て、向き合って欲しかった。  そんな彼女にとって、江戸に下ることは千載一遇のチャンスと言えた。これで、ついに母の愛を手に入れたと思った。しかし、実際には離れてなお、本物の和宮のことしか頭にない母の姿を目の当たりにすることとなったが、そこに太陽のような人が現れた。和宮にとっては母を独り占めする理由でしかなかった将軍・家茂だ。家茂が、和宮が欲していた場所、彼女の目の前に座った。
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和宮の空洞が満たされ始めた
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