市毛良枝、13年間の“母の介護“で「自分を見つめ直した」始めた趣味とは
俳優の市毛良枝さんが、音楽のある朗読会「あなたがいたから~わたしの越路吹雪~」に出演します。
昭和の大スター越路吹雪と、そのマネージャーであり希代の作詞家・岩谷時子の今尚語り継がれるふたりの物語を、「愛の讃歌」を始めとしたピアノ・チェロ・バイオリンが奏でる美しい名曲の数々とともに表現するステージです。
市毛さんは、1971年『冬の華』でテレビドラマ初出演。芸歴50年にして昨年は主演舞台を務め、今なおドラマなど精力的に活動中です。
一方で、華やかなイメージの裏では苦労も経験しています。13年間近く実母を介護。一時は介護うつ状態にまでなり、俳優引退を考えたこともあるそうです。
人生で多くの人が経験するだろう引退や介護、そして自分の人生とどうポジティブに向き合えたのか。本人に話を聞きました。
――今回の音楽のある朗読会はすべて実話が元になっているそうですが、以前テレビドラマでも岩谷時子さんを演じられていましたよね。
市毛良枝(以下、市毛):5年前わたしが「越路吹雪物語」で岩谷時子さんの役を演じさせていただいた時、とても嬉しかったことを覚えています。越路さんや岩谷さんと同時期を生きてきて、舞台が好きでよく観ていました。生意気にもドハマりの観客だったんです(笑)。
チケットが取りにくいような舞台もかなり観ていて、どうやって手に入れたのか今や思い出せないのですが(笑)、ステージ上の越路さんを何度も観ているだけでなく、岩谷さんご本人を劇場でお見かけしたこともありました。
わたしもミュージカルが大好きで、当時出演のお話をいただいたことがあるのですが、好きだからこそ無理とお断りしていました。
――それほど遠い距離感の存在ではなかったということですよね。
市毛:そういうことがいくつも自分の体験の中にあったので、一歩踏み出していればもしかしたら近い世界にいたのかもしれないと、そういう時代でした。
越路さんと岩谷さんのエピソードもリアルタイムに聞いていたので、その当時のことを自分が演じるということが、とてもうれしくて。それで改めて当時の資料をたくさん集めて読んでみたんです。
――リサーチした結果、いかがでしたか?
市毛:すると思っていたふたりの姿とはまた違う、実際の姿を感じました。その時、岩谷時子さんの育ち方、思考が、自分ととても似ていたことにと気付いたんですね。
おこがましいことなのですが、わたしは岩谷さんと似ているかもと思ってしまって(苦笑)。そのわたしが60歳過ぎでこの役に出会えるなんて、本当に素敵なことだなと思ったんです。