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トイレの個室に誘い込み、小学生の陰部を触っていた…「あえて男児を選ぶ」性犯罪者の卑劣なワケ

犯罪が起きやすいのは「入りやすく見えにくい場所」

 立正大学教授で社会学博士の小宮信夫さんによれば、犯罪が起きやすいのは「入りやすく見えにくい場所」だといいます(*)。  たとえば駐車場には誰がいてもあやしまれませんが、車の陰など死角も多い場所です。高い建物に囲まれた道は、人目がありそうですが建物が高層になればなるほど監視性は低くなり、住人も外で何が起こっているか気づきません。建物が壁になり、周囲を行き交う人から見えづらくなることもあるでしょう。  なかでも日本の公衆トイレは「誰もが入りやすく」「誰からも見えにくい場所」の代表例だといいます。というのも日本の公衆トイレは男性用と女性用の入口が近く、万が一男性の性加害者が女性を尾行しても周囲に誰もいなければ一緒に入れたり、入口にある壁が邪魔をして買い物客や従業員の視線が届きにくいことも少なくないからです。  しかし、海外の公衆トイレは事情が異なります。男性用と女性用の入口が離れて設けられていたり、建物の表と裏に分かれているなど、犯罪者が犯行に及ばないようにデザインされているものが多いのだといいます。たとえ犯罪者に「犯罪をしたい」という動機があっても、成功しなさそうなら「ここは無理か」とその場から退散します。 「子どもに性加害をする」といった動機を持った人が、犯罪をする機会に巡り合って初めて犯罪が起きる。たとえ動機をなくせなくても、その機会さえ与えなければ犯罪は起きない――この考えを「犯罪機会論」といいます。

避けるべきは不審者だけでなく「危ない場所」

公園のブランコ 日本ではまだまだ「不審者に気をつけましょう」「あやしい人にはついていかない」「防犯ブザーを鳴らそう」など、子どもが犯罪者にどう対処するかを念頭において注意喚起することが多いです。  しかし、前述のとおり小児性犯罪者は街の風景に溶け込んでいるので、見た目だけではどんな人かわかるはずはありません。「不審者」だけでなく「危ない場所」を避ける視点も、子どものための防犯面ではとても重要になってきます。  社会全体で小児性犯罪を含む犯罪者の犯行の機会を奪うためにも、「入りにくく見えやすい」場所をつくることは社会全体の喫緊の課題だといえます。 *小宮信夫「『危険なトイレ』と『安全なトイレ』は何が違う? 女性専用トイレ廃止問題を『犯罪機会論』から考える」Yahoo!ニュース、2023年4月18日
斉藤章佳
精神保健福祉士・社会福祉士。西川口榎本クリニック副院長。1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症回復施設の榎本クリニックで、ソーシャルワーカーとしてアルコール依存症をはじめギャンブル、薬物、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニア(窃盗症)などあらゆる依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で、現在までに3000人以上の性犯罪者の治療に関わる。著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『盗撮をやめられない男たち』など多数
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