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NHK新ドラマでの山下智久の奮闘ぶり。“コミカルな三枚目”役がやけにハマる

圧倒される山下智久イリュージョン

 モテるためだけにフレーズを練習したことや代打で彼女を呼んだことがバレてしまう。そもそもなぜ永瀬は嘘がつけなくなったのか。第1話でのこと。巧みな嘘を武器に“ライヤー永瀬”の異名を取り、営業成績トップを誇っていた。  建設予定地の地鎮祭で怪しげな祠(ほこら)と石碑を見つけ、スコップで壊してしまった。それ以来、妙な突風が吹くようになり、不思議と嘘をつきたくてもつけなくなってしまったのだ。  当然、成績はどんどん下がる。でも同時に永瀬は人間としての本来的な生き方に気づく。嘘も方便とはよく言うけれど、永瀬の場合は、むしろ本音こそがピンチ打開の唯一の方策。  ヒュ~と風が吹いて、流れるような早台詞で悪党どもを成敗する。悪徳不動産屋から正直不動産屋への切り替わりが、まるで中国雑技団の名物演戯、変面のごとし。山下智久イリュージョンにぼくらは圧倒されるしかない。

福きたれ、“笑いの時代”

 今回のスペシャルでは、この突風が、新年の風のように画面内から視聴者側へ吹き込む感じがいい。きたきた、これこれ。永瀬にとっては祠のたたりであっても、視聴者にはありがたい初風。  登坂寿郎社長(草刈正雄)から成績トップを条件に課長昇進を約束される永瀬は、「このたたりを祓いたまえ、清めたまえ」と心の中で祈る。でも、もし、永瀬がまた嘘をつくような人になってしまったら、せっかくの名演がつまらなくなってしまわないだろうか。  山P得意のクールビューティなら、ライヤー永瀬の側面だけで十分。でも本音の永瀬の側面による笑いが呼び込まれることで、山下の演技はより多面的になる。  山Pと言えばクールだなんていつの時代の話だろう(もちろんクールな表情も磨きがかっている)。今や、山下智久は、福きたれ、“笑いの時代”を生きる俳優としてバージョンアップされたのだ。
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最適役にして最適解を導く山下智久
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