こうやって歴代ポーチたちを眺めてみると、新しいポーチ以外は、どのポーチにも思い出があるとわかります。そしてその思い出は、ポーチを見ることによってよみがえります。
ランズエンドのポーチはすべての海外旅行に持っていったので、例えばロンドンで泊まった異常に広いバスルームのホテルを思い出したりします。
また、自作の布製ポーチを見れば、とんでもなく大変だった引っ越しの契約のあれこれを思い出します。
そして今もよく使う小さ目のポーチを見れば、財布にお金を入れ忘れたとき、ポーチに入れておいた四つ折りの千円札に助けられた思い出など、次々と記憶の底からよみがえります。
これらすべて自分がポーチを見たときの印象です。一方、私がバッグからポーチを取り出したとき、それが他人にどんな印象を与えてきたかはわかりません。もしかして、自作のキャスキッドソンの生地のポーチを見た人は、なぜその中に銀行の通帳が入っているのか、不思議に思ったかもしれません。

小さなプライベート空間を内包するポーチ
※写真はイメージです
小さなプライベート空間を内包するポーチ。これからも自分ばかりではなく、他人にも何かしらの印象を与えることでしょう。だとしたら、これから新しいポーチを選ぶときは、他人に与える印象も考慮するといいのかもしれません。
それでもなお、自分の好みを最優先させるのが一番だと思います。なぜならポーチは思い出を運ぶ小さな小道具だからです。
◆筆者私物
インスリンポーチ pine tail
トラベルポーチ LANDS’END
ピンクのポーチ MANICURE FINGER
<文/小林直子>
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