「ですが、私がふとトイレに立って戻ってくると健太くんが別人みたいに冷めた表情で服に着替えている最中で、何が起きたのかさっぱり分かりませんでしたね」
茉里さんが引き止めても健太くんは聞く耳を持たずに部屋を出て行ってしまいました。

「あんなに確かめたのに、あの健太くんがただヤリたかっただけ?嘘でしょ?それとも私が何かした?と頭の中がぐるぐるしました」
そしてふとインスタを開いてみると、健太くんがストーリーズをアップしていたそう。
「あわてて見てみたら、黒い画面に白い文字で『デートにユニクロの下着なんてありえねーだろ!マジ蛙化現象』と書いてあり、はぁ?と思いました。私がトイレに立っている間に脱ぎ散らかした下着のタグを見たんでしょうね」
確かに茉里さんの下着はユニクロでしたが、レースを使った大人っぽいデザインで、決して男性を萎えさせるようなものではありませんでした。
「それに蛙化現象って、好きだった相手がいざ自分のことを好きになると気持ち悪くなっちゃうってやつですよね。
確か童話『かえるの王様』が由来の。まぁ今の子達はこんな風に、ちょっと幻滅したとかそのぐらいの意味で使っているのでしょうけど」

きっと茉里さんに対して素敵な大人の女性の幻想を持っていた健太くんは、初デートには当然とびきり素敵な下着をつけてきてくれるに違いないと信じていたのでしょう。
「でも健太くんて、蛙化とか言うわりに下着のタグを見るまではユニクロだって気がついていなかったんですよ? なに様のつもりなんでしょうか?
とにかく、また私のことを大切に想ってくれる相手じゃなかったんだと思い暗い気持ちになりました」
そのまま健太くんとは2度と連絡を取らなかったそう。
「そういえば、健太くんと話している時に“泣きっ面に蜂”ということわざを使ったら『なにそれ意味分からない』とおばさん扱いされたことがあったのですが、正にこういう状況のことだよと教えてあげたいですね」と苦笑いする茉里さんなのでした。
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<文&イラスト 鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
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