そうした演技のベースがあって、初めて別の要素がいろいろと加味されることになる。宮沢と佐藤の場合だと、親の存在が話題性としてもフィーチャーされるのは当然のこと。
加味すべきものは加味するべきだし、それが人間性に関わるものなら、なおさらのこと。人格形成に大いなる影響を与えた存在のことを引き合いに出しながら、補足していくことで見えてくることもある。
ただし、補足情報にしてはちょっと本質的過ぎる気もする。宮沢の父が、元THE BOOMのヴォーカリスト、宮沢和史で、佐藤の父が浅野忠信、母がCharaだと知ったあとでは、宮沢、佐藤それぞれの演技に対する見え方は、本人たちが意図する以上に補強されるからだ。

宮沢氷魚 ファースト写真集 『Next Journey』(集英社)
(こういう言い方は嫌だけれど)2世俳優対決としてネット上で話題になった第3話を見てみよう。
冒頭、富士山の袖に広がる田園の中、「晴見フィルハーモニー」のトランペッター森大輝(宮沢氷魚)が練習している。
まっすぐトランペットの先を見つめて、ロッシーニのオペラ『ウィリアム・テル』フィナーレの軽快なフレーズを響かせる。
この横顔、違う作品でも見た気がする。そうだ、プロ野球球団の新人スカウトを演じた『ドラフトキング』(WOWOW、2023年)の第2話、屋上場面。
望遠鏡をのぞく。夕日に照らされた表情が、役に命を吹き込んでいた。それと同じように、今度はトランペットを吹く大輝の顔に朝日が差す。そのとき、宮沢のあの琥珀色の瞳が光ることを見逃してはいけない。
あの瞳の色こそ、宮沢が父からもらった宝物に他ならない。瞳の色が父から子へ引き継がれることで、宮沢の演技は、ひときわ唯一無二のものとしてむしろ輝きが増す。
この親ゆずりの瞳の輝きにひきつけられない視聴者はたぶんいないはず。