杉咲花、フジ系連ドラ初主演でさらなる難役へ。“頭ひとつ抜けた”どころではないとわかる直近3作品
公開中の『52ヘルツのクジラたち』
中でも鮮烈な印象を残すのは居酒屋の場面。彼女の、自ら死を選ぼうとするほどの絶望を口にする様を見て、涙する人は多いだろう。この場面において杉咲花は、「精神状態がギリギリの状態から始まるシーンということもあり、その状況に自分を追い込みつつ、何度も繰り返し行われる撮影の中で最後まで鮮度を保てるかという緊張がありました」(プレス資料より)と語っており、その言葉でも表現しきれないほどの苦労があったことが伺える。
その絶望を告白する姿を見ていたからこそ、彼女を救った親友との交流の中で、徐々に笑顔になり、時には心から幸せそうにふざけ合ったりする様にもまた涙腺を刺激される。志尊淳が演じるトランスジェンダー男性の言葉の1つ1つが、彼女にとっての救いになっていくことが分かる様も、また大きな見どころだろう。
さらに圧巻なのは、優しいようで徐々に危うさを見せていく青年役の宮沢氷魚との関係だ。杉咲花は彼にアプローチをされ、ただ言われるがままの一方、漠然とした不安を抱えているように見える。
その宮沢氷魚が、杉咲花だけでなく志尊淳にも「言葉は丁寧でも圧力をかけていく」様が恐ろしく思えるし、やがて杉咲花がはっきりとその圧力へ精神的な抵抗、さらには物理的な反撃をしていく様も、怖いと同時に共感できる、やはり多層性のあるキャラクターを杉咲花は、これ以上なく体現できるのだと思い知った。
このように『法廷遊戯』『市子』『52ヘルツのクジラたち』と、直近の映画を振り返るだけでも、俳優として頭ひとつ抜けたどころではない実力を見せていることがわかる杉咲花。また新たな魅力を、きっとドラマ『アンメット』で発見できるだろう。
<文/ヒナタカ>
ヒナタカ
WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「CINEMAS+」、紙媒体『月刊総務』などで記事を執筆中の映画ライター。Xアカウント:@HinatakaJeF
1
2











