自分と向き合う時間には第三者に伝えることが大切なことも
――この作品に触れたことで、新たに気づいたことはありますか?
山口:乃愛は自分の過去の嫌な記憶をずっと抑え続けてきました。それが、シェアハウスに住むことになり、自分と同じようにトラウマを持つ女性たちを助けたり、話を聞いたりすることで、自分自身の気持ちとも向き合っていたのかなと。
自分で自分を慰めてあげることができるようになったのが乃愛の一番の成長で、なにより“自分と向き合う時間というのがとても大切なことなんだ”ということを、教えてもらいました。
――自分自身と向き合う。
山口:はい。そこに深く向き合って、はっきりと見つめていくために、第三者に伝えていく瞬間が必要になってくるかもしれない。
そういう決断を出さなきゃいけない時があると、この作品を通じて感じました。
――第三者に伝えることで、より深く自分と向き合うことができると。ちなみに本作では、乃愛は被害に遭って弁護士でもあるお兄さんに相談します。でも、お兄さんは現実を知っているからこそ、「裁判は難しい。負けると思う」と答えてしまいます。
山口:みんな乃愛のことを助けようとしてくれているし、悪い気持ちを持った人はいない。兄も助けようとしてくれているけど、乃愛が求めているものとは違った。
あのとき、乃愛は解決方法じゃなくて、ただ“つらかったな”と寄り添って欲しかっただけだと思うんです。だけど兄は現実を知っているからこそ、解決策を考えた。
誰も悪くないけど、あのときは食い違ってしまったんですよね。