それからもそのおじさん客は夏希さんに「なんで俺に使いかけの粉チーズやタバスコなんか出すんだ!毎回新品を持ってこい」など、理不尽な要求をしたそう。
「最初は適当にあしらおうということになっていたのですが、あまりに目に余る身勝手な行動が多いので店長とバイト皆んなで話し合いになりました。
そして、そのおじさん客にはピッチャーごと水を提供して、その都度(つど)注ぎに行かないことに統一し、次に何かあったら“もう出入り禁止だ”と店長が言いに行く、ということになったんですよ」

そんなある日、裕美子さんがワンオペの時にそのおじさん客が来店したそう。
「あぁ何で私ひとりの時に…と思いましたが、仕方がないのでグラスのお水とピッチャーを出したら、やはりうっとうしく思われているのを察知したのか、私を呼びつけて『おい、機種変更したからメールの設定をやってくれ』とスマホを押し付けてきて…。水を要求できなくなったら今度は雑用をやらせようとしてきたんですよ」
心の中であきれながら「申し訳ございませんが、それはできかねます」と丁寧に断りその場を離れようとすると、おじさん客がニヤつきながらそのスマホを裕美子さんに向けるとカシャッと写真撮りました。

「その瞬間に私の怒りスイッチが入ってしまい『はぁ?無許可で何やっているんですか。肖像権侵害ですよ。今すぐその写真を私の目の前で消してください。早く、さぁ早く』と気がついたら、そのおじさん客をものすごく冷たい目でニラみながら追い詰めていたんですよ」
いつも下ネタやつまらないダジャレですら笑顔で受け流してくれていた裕美子さんの豹変(ひょうへん)に、おじさん客はあきらかに動揺している様子だったそう。
「普段の私はムカついていてもほとんど表には出しませんし、見た目もほんわかしていて常に笑顔なのですが…いざ怒るとギャップもあってかすごく怖いって言われるんですよね(笑)』