
そして、円形劇場へ。劇場内部に入るには、少し高いところに上らなくてはいけませんでした。するとそのお爺さんが手を差し出し、ここに足をかけなさいというジェスチャーをしたため、お言葉に甘えて足をかけさせてもらうと、その後佐藤さんのお尻をヨイショと持ち上げてくれて上ることができました。
「すごく助かった!と思ったのですが、それと同時に、お尻を思い切りわしづかみされたような気がしたんです。一瞬のことだったので気のせいだと思い、そのまま内部を歩き、最後に高いところから降りるときもまたお爺さんは手を差し出して足をかけろとジェスチャーしてきました。高くて怖かったので、今回もお言葉に甘えて足をかけさせてもらったのですが……それが失敗でした」
お爺さんの好意に甘えて、足をかけて下に降りようとした瞬間、今度はお尻ではなく股の部分に手を当て、指をグリグリと押し付け始めたのです。危ないと思い、すぐに逃げようとしましたが、見た目は細くて弱そうなのに、すごい力で抱きすくめられた佐藤さん。
「えっ!?と思ったときにはすでにガッチリ腕で腰を掴まれていました。おじいちゃんと思っていたのに力が強くてなかなか離れてくれず、足で蹴るようにしてなんとかお爺さんから離れ、猛ダッシュで逃げました。幸いお爺さんは追っては来ませんでしたが、遺跡を出てからも恐怖で震えが止まりませんでした」
観光地のように客引きなどがおらず、庶民的で魅力を感じていただけに、そのチカン事件は佐藤さんにとってものすごくショックでした。トルコを旅する中で、ナンパや客引きに遭うことはあっても、今回のように危険な思いをすることは今までなかったといいます。
「観光地では客引きや詐欺、盗難も多いので注意して行動していたのですが、観光地っぽくないので気を許してしまったのかもしれません。さらに、まさかヨボヨボのおじいちゃんがそんなにガツガツと性欲をむき出しにするとも思えず……逃げられたから良かったですが、周りに人がいなかったので本当に怖かったです。警戒心が足りなかったと反省しています」
海外は日本とは常識がまったく異なるため、思いもよらぬトラブルに遭ってしまいがち。特に女性のひとり旅ではこういった危険も時には起こります。
「バッグパックをもって海外をひとり旅するのは、現地の人とも触れ合えてとても楽しいのですが、あの経験以来、一人になってしまう場所には行かないように注意しています」
【他のエピソードを読む】⇒
「実録!私の人生、泣き笑い」の一覧へ
【あなたの体験談を募集しています!】⇒
心がほっこりした「ちょっといい話」、ありえない!「びっくりした話」「ムカついた話」、人生最悪の恋愛を募集中!(採用時に謝礼あり)ご応募はここをクリック
<文/塩辛いか乃 イラスト/魚田コットン>
塩辛いか乃
世の中の当たり前を疑うアラフィフ主婦ライター。同志社大学文学部英文学科卒。中3繊細マイペース息子と20歳年上の旦那と3人暮らし。乳がんサバイバー(乳房全摘手術・抗がん剤)。趣味はフラメンコ。ラクするための情熱は誰にも負けない効率モンスター。晩酌のお供はイオンのバーリアル。不眠症。
note/Twitter:
@yukaikayukako
連載「
乳がんドタバタ日記」Kindleで発売中!