法曹界で生きる女性の苦悩が描かれているのは寅子だけではない。寅子の学友・よね(土居志央梨)は高等試験(今でいう司法試験)の口述試験で見た目や言動が“女らしくない”という理由で落とされている。また、寅子の大学の先輩・久保田(小林涼子)も弁護士として奮闘していたが、ある日寅子に鳥取県にある夫の実家で暮らすことを告げ、弁護士の仕事も「辞めると思う」と話す。
その際、「婦人弁護士なんて物珍しいだけで、誰も望んでなかったんだ」「
結婚しなければ半人前、結婚すれば弁護士の仕事も家の事も満点を求められる。絶対満点なんてとれないのに」と口にしており、女性が法曹界で働き続けることのハードルの高さを感じた。
なにより、以前はハキハキした喋り方が特徴だったが、このシーンでは“女らしい”話し方に変わっていた久保田。弁護士になって周囲から矯正させられた様子だ。
話し方はその人間のアイデンティティであり、性別による決めつけによってそれらが損なわれることには「はて」と思わずにはいられない。加えて、個人的にも久保田の喋り方は好きだったため、その魅力が奪われたことに切なさを覚えた。
『虎に翼』は約100年前の話ではあるが、こういった寅子たちの苦労は多少なりともマシになったとは思われる。しかし、ドラマの中とはいえ汚職に手を染めなければ男性と対等に渡り合うことさえむままならなかった瀬古の姿を見ていると、現実でも法曹界の男女平等は改善に向かっているとは言い難いのではないかと痛感させられた。
<文/望月悠木>
望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):
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