3密、ソーシャルディスタンス…小池都政のコロナ対策とは

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こうした選挙の場合、注目候補というのが出てきます。現職の小池都知事はすでに2期・8年を務め、次に当選すると3期目になるわけですが、小池都政に関してはいろいろな評価があります。
これは日本に限らずですが、さまざまな地方自治体や、国家のトップは、2020年からコロナウイルスのパンデミックの対応に追われ、それによって本来目指していた政策とは異なることに労力を割いてしまった時期がしばらくあったことは共通しています。これは東京都も例外ではありません。ただ、コロナ禍は政治家の資質を問う局面でもあったと思います。
東京都のコロナ対策はどうだったか。小池知事は全国に先駆けて積極的にコロナ対策を進め、時には国との対決姿勢も見せました。疫病の感染が拡大しているときにどういった対応したかという意味では、小池都知事は「3密」や「ソーシャルディスタンス」といったワードセンスでコロナ対策を打ち出していきました。「五つの小」もありました。小人数、小一時間、小声、小皿、小まめにマスク、換気、消毒と言う五つの習慣をコロナ対策として打ち出したのですが、小は小池の頭文字であり、小人数含め無理やり自分の名前にこじつけている印象が強いです。
その実効性に関しては、僕は「20時」を境とした夜の街を控えろという政策の合理性にはかなり疑わしい。僕自身がミュージシャンでもあり、ライブハウスやクラブといった業種への締め付けのダメージは深刻であり、補償の問題もおきました。また、都民に警戒を促すため東京都庁やレインボーブリッジを赤くライトアップする「東京アラート」にどんな効果や意味があったのかにも、非常に疑問があります。
ただ今回の都知事選を踏まえて言うならば、前回の都知事選がこうしたコロナ対策を行っている中で行われていたことを考える必要があると思います。結果として、小池都知事は366万1371票を獲得して当選しています。次点の宇都宮健児氏に280万票以上の大差をつけており、これはもう絶大な、そして圧倒的な選挙の強さだと思います。山本太郎さんだったり、後に日本維新の会から国会議員になる小野泰輔さんなどは、まったく及びませんでした。

東京都ウェブサイト「知事の部屋」より
どんな選挙活動をして366万票を取ったのかというと、小池都知事は選挙活動をやらない選挙を展開したのです。各候補の討論会にも出席せず、オンラインのみで街頭演説も行わない。代わりに何をやったかというと、コロナ対策です。
「知事の仕事に注力することが現職の務めだ」というスタンスを取って、街頭に出るような選挙活動を行いませんでした。ただし、毎日の定例会見などでは常にメディアに対して、自分の政策や姿勢、名前、ビジュアルの露出を続けていたわけです。
これは僕からしたら立派な選挙活動です。ただし、この選挙戦は現職のみが可能であり、そして他候補とは圧倒的に平等ではない選挙戦を展開していたとも言えます。記憶に残っているのは、小池都知事の声で流れる電車内などでのコロナ対策アナウンスの冒頭で「東京都知事の小池百合子でございます」と、自身の名前を言っていました。
これも穿った見方かもしれませんが、選挙のときに街宣車から名前を連呼することと同じです。自分が立候補しているということを認識してもらうという意味で、実は名前の連呼にはすごく効果があると言われています。
小池都知事の戦略は、既にある知名度に加えて、コロナ対策を通してのアピールもした。コロナ対策自体は自治体の長としては当然取り組まなければいけないことなので、これは選挙戦ではないという批判と切り分けるのは難しいのですが、僕は巧みな選挙戦略として受け止めていました。