
前回の東京都知事選・小池百合子氏の出馬表明会見(2020年6月12日)※小池百合子氏の公式Xより
近年は明治神宮外苑の再開発事業への反対の声が出てきている中で、僕は小池都知事が当初、政策の一丁目一番地として掲げていた都政の透明化からは遠く離れてしまったのではないかと思います。
選挙公約として掲げていた「7つのゼロ」の達成率はどうなっているんだ、というツッコミもあります。公約の達成は物によっては難しかったりもしますが、「7つのゼロ」を公約として掲げておいて、達成率がゼロなのは悪い冗談のようです。最初に大きな看板を上げても、時が経てば有権者は忘れると思っているのでしょうか? それとも本人が忘れてしまったのでしょうか。
しかし、何よりも僕の中で問題だと思っているのは、関東大震災が起こった9月1日という日に、朝鮮人虐殺の犠牲者に送る追悼文を、小池都知事になってから送るのをやめていることです。石原慎太郎さんをはじめ歴代の都知事はみんな送っていました。
この追悼文は、震災という自然災害の犠牲者ではなく、震災後に噂されたデマなどによって虐殺されてしまった朝鮮人の人たちに対するものです。人為的に引き起こされてしまったこうした悲劇が繰り返されないようにという意味も含めて、追悼文を送っていたわけです。
加藤直樹さん著『九月、東京の路上で -1923年関東大震災ジェノサイドの残響-』(ころから刊)などの本でも明らかにされているように、行政、そしてメディアも含めてデマの流布に加担した結果、震災を生き延びた人たちが、市井の人の手によって犠牲になる事件が東京で起こりました。
小池都知事は不送付の説明として、「都慰霊協会が営む大法要で、すべての震災犠牲者を追悼している」としているんですが、虐殺の犠牲者は、震災は生き延びているわけです。震災は生き延びているにもかかわらず、その後デマが流布されたことによって、人の手で虐殺されてしまったと。
昨年、森達也監督の『福田村事件』なども劇場公開されて、こうした悲劇が、さまざまな場所でいろいろな規模で起こっていたということに、改めて恐ろしさを感じています。小池さんは東京都の知事として、このような悲劇を繰り返さないための強いメッセージを発していない。追悼文を送らない理由についても論点をずらした回答しかしていません。
先日、小池都知事の名前と顔入りのメッセージ付きで東京防災ハンドブックが全都民に配布されましたが、防災後の悲劇から目を背けるような態度で自治体の長が務まるのかは疑問です。
もう一つ、小池都知事に付いてまわるのが学歴詐称疑惑です。自身のプロフィール内に、エジプトのカイロ大学を首席卒業したとあったわけですが、この首席というのは本人の勘違いだったという弁解もされています。小池都知事は卒業証書を証拠として公開していますが、学歴詐称疑惑はずっとくすぶり続けていて、選挙のタイミングごとに取り沙汰されます。
4年前の選挙のときにも、石井妙子さんによる『女帝 小池百合子』(文芸春秋 刊)という小池都知事を扱ったノンフィクションが出版され、その中で小池都知事のカイロ大学時代の同居人・北原さん(単行本出版時は仮名、文庫本出版のタイミングで実名で告発)の証言によって、カイロ大学の卒業にかなり疑わしい点があるという告発がされていました。
この本は広く読まれ、再び小池都知事の学歴への疑問が高まったのですが、その際、Facebookの駐日エジプト大使館アカウントから、カイロ大学の声明文が発表されました。「小池百合子はカイロ大学を卒業しました」という声明がカイロ大学から出たため、追及は一旦は止むことになりました。
ところが2024年4月に発売された『文芸春秋』で、都民ファーストの会東京都議団政務調査会事務総長を務め、小池都知事の元側近である小島敏郎さんが「私は学歴詐称疑惑の隠蔽工作に加担してしまった」という手記を発表しています。カイロ大学の声明文の原稿を書いたとされるジャーナリストも登場します。外国人記者クラブなどで会見をした小島さんは、もし次の選挙で学歴にカイロ大学卒業と小池都知事が記した場合は、公職選挙法違反による刑事告発も考えているという姿勢を見せています。