「まだ私もダウン症を受け入れきれずに葛藤していたころで、即答できませんでした。
今思うと、もし僕の髪が青色でもママ僕のこと好きだった?という質問は『学校に行けない僕でもママは僕のことを好きでいてくれる?』って聞きたかったんだと思います。
でも、それは怖いから、遠回しな質問をしていたんじゃないかな。
『パパとママがあなたたちを大好きなように愛したらいい。心配しなくていいよ』と、返事をしましたが、これは自分自身へ向けた言葉だったようにも思います」
エイデンくんは、算数は苦手ですが、歴史が大好き。新しい学校に行くようになり本来の明るさを取り戻し、毎日歴史にまつわる作品作りに没頭するなど、個性が輝いています。
歴史好きなエイデンくん
イラストレーターでもある瑞穂さんは、このエイデンくんとのやりとりを、コピー用紙に絵と文を切り貼りしたささやかな絵本にしました。家族に見せて本棚にしまわれていたこの絵本が、出版にまで至ったと言います。ちなみに海外の人にも読んでもらえるように、英訳もつけました。翻訳をしたのは、夫のブルースさんです。家族みんなで作り上げた絵本が完成しました。
手作りの絵本
エイデンくんが不登校だった小学2年生のころ、「WISC」という発達検査を受けたことがありました。「息子だけ受けるのはフェアじゃない」と思い、心療内科を探して瑞穂さんも検査を受けた行動力に驚かされます。
「2時間の検査で、先生とパズルをしたり、数字を覚えたり、色々なことをするんです。パズルをするのは『この時間がこのまま続いてほしい』と思えるくらい幸せな時間。でも、数字が、もう全然覚えられない(笑)。人にはできることとできないことがあると、身をもって実感できて、すごくよかったです」
この検査の結果で、向いている仕事の一つに「作家」があった瑞穂さん。数年経って、本当に作家としてデビューを果たしました。
「人の出会いやご縁って不思議ですよね。まさか、私が本を出すことになるなんて、この時は夢にも思っていなかったですから」
瑞穂さんの言葉からは、子どもたちへの深い愛情が伝わってきます。「正直に言葉を書き綴ることが楽しくて仕方がなかった」と話す瑞穂さんの軽やかな生き方は、暗いトンネルを抜けて、思いがけない場所へとたどりつきました。
絵本を通して瑞穂さんが伝えたいのは、「『Be your self(自分らしく)』空気は読まなくていい、自分らしく生きてほしい」ということだそう。
「言葉で言うのは簡単だけど、皆さんはできていますか?」実際、本を読むと自問自答せざるをえない内容でした。
<取材・文/かたおかゆい>
かたおか由衣
東京都出身。 リゾート運営会社勤務と専業主婦を経てフリーライターに。2019年から4年間竹富島で暮らす。教育、子育て、エンタメを中心にインタビュー記事やコラムなどを執筆。20代で出産し、転勤や子どもの不登校などままならないことにぶつかりながらも乗りこなす日々。漫画やエンタメに癒されている。
Twitter:
@Momyuuuuui